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【2行2列複合エレベーター】「枢機に還る飛車」の作成

CAUTION! 
純粋に指し将棋をベースにした好手・好手順等の創出を目指している詰将棋創作者はここでブラウザバックした方が良いです。質の低い手順に気分を害したり、叩かずにはいられなくなる恐れがあります。

エレベーター詰のNOTEで2行2列複合エレベーターを作ることを目標にしていたが、今回は一つの成果を得たのでそれについて述べたい。

【問題】行列スイッチをどうするのか?

2行エレベーターも2列エレベーターも玉の往復機構を織り込むが、問題は行と列をどうスイッチさせるかだった。というのも、仮に飛車2枚を動かしてスイッチ部分で両方を直角に曲げようとすると、スイッチ後にそのエリアで詰み上がり、エレベーターとは言い難い状態になってしまうのだ。これは困ったことになった。

【解決案】飛車2枚で無理なら1枚でエレベーターさせりゃえぇですやん

終始飛車2枚を交互に動かす手順を目指すと上手くスイッチできないので、2つの独立したエレベーターユニットを組合わせれば上手く行きそうだ。それなら、手順前半の行/列エレベーターのいずれかの往復機構を飛車1枚で代行させれば実現するのではないだろうか?今までの経験からするとかなり難易度の高い課題を思いついた。物は試しとばかり、これに立ち向かった結果、意外とあっさり下のサンプル2つが生まれた。

02(5六飛ver)

どちらも手順前半は飛車1枚による2行エレベーターで、手順後半は飛車2枚による2列エレベーターとなっている。サンプルが2つあるのは手順後半の2列エレベーターのターン時における回転の有無との組み合わせを試してみたかったためだ。結果から言えば、非回転ターン仕様(左図)は回転ターン仕様(右図)に比べて1列分スペースが省略できるため2行エレベーターとの相性がとても良かった。それぞれについて見て行こう。

【2行2列複合エレベーター】「枢機に還る飛車」

35 二行二列3-2-01

【初手~17手】ひたすら追いかけっこ
▲5五飛   ▽3六玉   ▲3五飛   ▽2七玉Ⓐ
▲3七飛   ▽1六玉   ▲1七飛   ▽2五玉
▲1五飛   ▽3六玉   ▲3五飛   ▽4七玉
▲3七飛   ▽5六玉   ▲5七飛   ▽6五玉
▲5五飛

Ⓐ:▽4七玉だと12手目へショートカットして早詰
  ▲5七飛と追った際に▽4五玉とすると
  ▲5五飛▽3六玉▲4八桂▽2七玉▲2八金▽1六玉▲1七金まで早詰

飛車1枚の2行エレベーターで「∞」のような面白い軌跡を描いた

35 二行二列3-2-04 17手目55飛2回目

【17手~最終手】
▲5五飛   ▽7六玉   ▲8六飛   ▽6七玉
▲7九桂   ▽7八玉   ▲8八飛   ▽7九玉
▲8九飛   ▽7八玉   ▲7九歩   ▽6七玉
▲5七飛   ▽7六玉   ▲8六飛   ▽6五玉
▲5五飛   ▽7四玉   ▲8四飛   まで35手詰

この手順は非回転ターンを用いた飛車2枚の2列エレベーターを流用した

35 二行二列3-2-06 35手目

初手で打った▲5五飛が行・列エレベーターの往復をし終えると元居た場所に戻ってくるのが個人的に好きなポイントで「枢機(=肝心かなめの大切な所、将棋で言えば天王山や都にあたる5五)に還る飛車」と命名した。

「枢機に還る飛車」補足(10手目▽3四玉)

35 二行二列3-2-03 10手目34玉の場合

10手目▽3四玉は以下の手順(一例)で早詰

▲3五飛   ▽2四玉   ▲5五飛   ▽2三玉
▲1五桂   ▽1二玉   ▲8二飛成  ▽2二歩
▲同 龍   ▽同 玉   ▲2五飛   ▽2四歩
▲同 飛   ▽3一玉   ▲3二歩   ▽同 玉
▲2三飛成  ▽4一玉   ▲4二歩   ▽3一玉
▲1三角成  まで早詰(31手)
▲3五飛   ▽2四玉   ▲5五飛   ▽3五銀
▲同 角   ▽1五玉   ▲5七角   ▽2五歩
▲1六歩   ▽同 玉   ▲1七銀   ▽1五玉
▲2六銀   ▽1四玉   ▲1五香   ▽2三玉
▲1三角成  ▽3二玉   ▲8二飛成  ▽4一玉
▲4二龍   まで早詰(31手)

【2行2列複合エレベーター】「誘掖の銀」

37 二行二列4-2-01 初形図(5六飛ver)

【初手~15手】
▲4六飛   ▽3四玉   ▲2三銀打※ ▽2五玉
▲1四銀不成※▽同 玉Ⓐ  ▲1六飛   ▽2五玉
▲2六飛   ▽3四玉   ▲2四飛   ▽4五玉
▲4四飛   ▽5六玉Ⓑ  ▲4六飛   

※:銀の手助けが入る不本意な手順なので「誘掖の銀」と命名した
Ⓐ:▽同桂は▲1七桂打▽同と▲同桂▽3四玉▲4三飛成まで早詰
Ⓑ:▽3六玉は▲4六飛▽2五玉▲1七桂打▽同と▲同桂▽3四玉▲4三飛成まで早詰

飛車1枚の2行エレベーターで帽子👒のような軌跡を描いた

37 二行二列4-2-03 15手目

初手▲4六飛は15手目に還ってきた。

【15手~最終手】
▲4六飛   ▽6七玉   ▲7七飛   ▽5八玉
▲5七飛   ▽6九玉   ▲5九飛   ▽7八玉
▲7九飛   ▽6七玉   ▲5九桂   ▽5七玉
▲4七飛   ▽5八玉   ▲4八飛   ▽5七玉
▲5八歩Ⓒ  ▽5六玉   ▲4六飛   ▽6五玉
▲7五飛   ▽5四玉   ▲4四飛Ⓓ  まで37手詰

Ⓒ:▲7七飛は▽6七香成で不詰
Ⓓ:▲4三飛成、▲4三銀不成、▲4四銀成でも可

37 二行二列4-2-04 37手目

「枢機に還る飛車」と違って回転ターンを用いた飛車2枚の2列エレベーターを用いた場合、2行エレベーターを4列分で表現しなければならない。これが上手くいかなくて飛車1枚での完全折り返し手順を実現できず、かなりの窮屈さを感じた。この4列完全折り返し機構の作成は今後の課題になりそうだ。

「誘掖の銀」補足

37 二行二列4-2-01 初形図

帽子👒の軌道の代わりに難易度を優先すれば、初形図の5六飛は1六の方に置いておくといいかもしれない。

まとめと今後の予定

2行2列複合エレベーターの作成にあたり、飛車2枚を終始動かすと行列スイッチ部で詰むため、手順前後半で独立したエレベーターユニットを組合わせたサンプルを2つ考案した。とりわけ、手順前半の2行エレベーターを飛車1枚で完全代行できた「枢機に還る飛車」は望外の成果と言えよう。

画像10

今後は➀「誘掖の銀」のような4列分の2行エレベーターを飛車1枚で完全代行させる機構の作成と、②前後半でのエレベーターユニットを入れ替えた2列2行複合エレベーターの作成を予定している。

スペシャルサンクス

窪田義行(空気から整えていく 環境派)様:拙エレベーター詰に対して”詐術的印象を与える”という迚も心温まる難癖を頂戴致しました。漸くエレベーターの深淵を僅か乍ら覗き込むことができました。

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