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エッセイ#00「過去から届いた手紙」

半年前まで、私には5年間お付き合いしていた方がいた。
私にはない、表裏のない優しさをもっていて、尊敬していた。
私は結婚適齢期と言われる歳になり、このままこの人と結婚するのかなぁなんて、ぼんやりと思っていた。

けれど、彼と一緒にいるうち、なぜか徐々に息苦しさを感じるようになった。
彼を受け入れられないようで、自分自身が嫌でたまらなくなっていった。

友だちに相談すると、「ハルがハルらしくいられないなら、やめちまえ!」と一刀両断。
彼女の強い言葉に戸惑いながらも、「私らしくって何だろう?」という疑問が心に残った。
その友人は、高校時代に私が書いた小説のタイトルを口にした。
「あれ、ハルっぽくて好きなんだよ。ハルの中にある、すごくドロドロしたものを見た気がしてさ」と言われ、思わず笑ってしまった。
深淵を覗くのはやめてほしい!なんて冗談を返しつつも、そんな私を丸ごと受け入れてくれる友人には、感謝しかなかった。

家に帰って、彼女が言っていたその小説を久しぶりに読んでみた。稚拙な部分も多かったけれど、そこには私が何を感じ、どう生きたいのかがしっかりと滲み出ていた。
まるで、当時の私が今の私に向けて残してくれた解答用紙のようだった。

その小説を仕舞っていた本棚から、小さなノートが出てきた。就職活動の時に自己分析用に使っていたものだ。ページをめくると、こんな言葉が書かれていた。

「悩み、考え、感情が揺れ動いて、そうして生まれた自分を形にして世に出したい。そして誰かの心と共鳴したい。その実感で喜びを感じたい」

その瞬間、心の中にずっと引っかかっていたものが、すとんと腹に落ちた。
彼が「影響を与えたくない」と言った言葉に、少しだけ寂しさを覚えた理由がわかった気がする。

その後、彼と話をした。私は、自分が誰かと関わりながら共鳴し合って生きたいんだと、ようやく自分の言葉で伝えることができた。私にとっては大事なことだった。

結局、私たちは別々の道を歩むことになったけれど、彼と過ごした時間の中で、心が浮き沈みするたびに、少しずつ自分を知ることができた。その経験が、いつかまた迷った時に、あのノートのように、私を導いてくれるかもしれない。

だから今度は、この「note」に自分の気持ちを書き記していこうと思う。
なぜなら、未来の私だけじゃなく、誰かの道標になることもあるんだって、今ならわかるから。

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