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『「内向の世代」初期作品アンソロジー』

『「内向の世代」初期作品アンソロジー』

吉田修一・選
出版社:講談社(講談社文芸文庫)
発行年:2016年1月8日

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(内容紹介)
 1970年、文芸雑誌「文芸」は二度にわたり、当時たびたび芥川賞候補に挙がっていた若手五人を集め、座談会を開く。翌年小田切秀雄に「内向の世代」と呼ばれる彼らの文学は、現代の作家たちにも大きな影響を与えることになる。本書は座談会出席者の一人黒井千次が、初期作品の中から瑞々しい魅力を放つ小説を精選した稀有なアンソロジー。収録作家・後藤明生、黒井千次、阿部昭、坂上弘、古井由吉。
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〇「私的生活」後藤明生
 初読は、とにかく男の身勝手さに若干イラっとしてしまいました。時間を置いて再読した際、タイトルに書いてある通り、本文に登場する私的生活/公的生活の揺れ動きに注目してみました。男の身勝手さはやはり許されませんが、そのなかをかいくぐってタイトルの真意に迫ろうとしましたが……。おのれの読解力が低いことを痛感するだけでした。
〇「闇の船」黒井千次
 会社で残業する男たちの一夜劇。台風もあいまって、本当に異様な雰囲気。本当に劇としてやってみても面白いかもと思いました。途中から状況がつかめず、思考がぐちゃあ……としてしまう場面もいくつかありますが、それもこれも残業を命じたあの方のせいにしてしまいます。まさに現実と虚構。
〇「鵠沼西海岸」阿部昭
 語り手の兄のことを思うと、なかなかに時代を感じる一編でした。全体通して何だかやるせない。
〇「日日の友」阿部昭
 会社の先輩が病気がちで……。彼の本心を推し測るのが難しい。
〇「ある秋の出来事」坂上弘
 語り手の心情の揺れ動きが繊細。むしろグズグズしていて、決定的なことをしないあたり、どことなくリアルだなと思いました。とある家庭のちょっとした秘密を垣間見ているようです。
〇「円陣を組む女たち」吉井由吉
 女性に対する何かしら根の深い不快感に関するあれこれ。女の子たちが円陣を組んでいる描写がタイトルにするだけあって象徴的で強く印象に残ります。あと、最後のシーンは空襲か戦争でしょうか。うーん、何かを分かったつもりで、何にも分からないような状況です。

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