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「老いと記憶」加齢で得るもの、失うもの      増本 康平著 中公新書

  今まで、「高齢になれば、誰でも記憶力が衰えるものだ」と漠然と思っていた。が、この本を読んで、自分の思い込みがいかにマイナスだったか、深く反省した。
この本は、「記憶とは何か」という深く専門的な内容を、読者にわかりやすく事例や喩えを使って書かれている。
特に印象に残ったこと
○「加齢によってすべての能力が衰えるわけではなく、ポジティブに変化する機能もある」、“知恵”(教育によって育成される学問知、経験によって培われる経験知、判断力、問題解決能力、対人スキルなど)のように、成人期以降に出現し高まる能力の存在も指摘されている。」
何かをはじめるのに遅すぎるということはない
手続き記憶(楽器の演奏、スポーツ、車や自転車の運転などの技能)も加齢の影響がみられない、もしくは小さい。「熟達者とされるだけの技能の獲得には一万時間(1日3時間で10年程度)の訓練が必要。平均寿命が80歳を超えていることを考えると、退職した後でも何か新しいことにチャレンジし、その分野のエキスパートになることは可能」
エイジズムが記憶に影響する
年齢による差別、特に高齢者に対する偏見を意味する「エイジズム」
 若い時に老いに対して過度に否定的なイメージや偏見を持っていると、自分が高齢になった時、「年をとった私の様々な能力は衰えているに違いない」という思い込みや先入観を抱きやすくなる。偽薬効果(プラセボ効果)と同じで、老いに対する思い込みが記憶に及ぼす影響も馬鹿にはできない。
老いによって生じるさまざまな変化を受け入れ、自分を肯定的に評価することが、思い込みによる記憶力の低下を防ぐことにつながる。
気分が記憶に影響する
「楽しい、嬉しい、幸福といったポジティブな気分、抑うつ、不安といったネガティブな気分は認知機能のパフォーマンスと密接に関連している。

「今は若い人も必ず年をとるのだから、高齢者が楽しんでいる姿を見ることができるのは、下の世代に対する良いイメージを促し、将来への希望にもつながるのではないか。」

 人生を振り返る長期的視点では「行わなかったこと」をより強く後悔する傾向がある。そして行わなかった後悔は、自分が死ぬ間際では解消できないものばかり。会いたい人に会っておくには、自分ができるだけ健康であり、なおかつ相手が存命の必要がある。

○記憶の再構成。私たちの経験や経験に対する評価は、その後の経験で常に書き換えられる。経験した事実は変えられないが、その後の経験が過去の後悔や嫌な思い出を再解釈するきっかけを与えてくれる可能性もある。

 年老いても成長し続けるためのやる気と努力を失わなければ、たとえやり直しのきかない後悔があったとしても、その後悔から得た教訓や後悔の意味を見出すことで、それらの経験が無駄ではなかったと思うことができる。

などなど、引用が長くなってすみません。たくさん学ぶことがありました。


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