先日の朝刊一面に、70歳の女性が1年半前から「アプリでスキマバイト」をしているという記事があった。 「何もしないでいると社会からの疎外感を感じ、体が衰える心配もあった」という。ひとり暮らしで猫と住んでいるという女性。「働けるうちは働きたい」ということだろう。「体調に合わせて、黙々と手を動かす仕事を中心に選んでいる」80歳くらいまで続けたいと書いてあった。月に10万円程度の収入。「年金だけでは生活していけないですよ」 このアプリの運営会社によると、65歳以上の登録者数は約5
9月は家中の片付けをしていた。 この家であと何年生きるのか、というのがある程度見えてきたので、必要なものとそうでないものとの区別がつきやすい。 仕事をしない今、洋服も靴も最低限あればいい。 居間も台所も片っ端から片づけまくっている。必要なモノだけになった空間は空気が清々しくさっぱりする。 若い時から禅のお寺が好きで、時間があるとよく禅宗のお寺に行ってお庭を眺めていたりした。白砂と数えるばかりの石。どんなに辛いことがあっても、この空間に身を置くと、「またがんばろう」と
4月から入会した水彩画の会。先輩方から学ぶことがとても多い。 Fさんは、長年看護師さんで、40代でドイツの病院で働き、そこでいろいろ学んで57歳にしてアフリカ(タンザニア)で6年も働いたのだという。 その間、マラリアに4回もかかったそうである。そのつど菌を顕微鏡で調べて、日本から持って行った薬を調べ、自分で治したという。 半端ない覚悟に驚いた。 お母さまの介護のため日本に戻り、看取られたということだった。 76歳の今も、仕事を続けておられる。 彼女が描く絵はたい
時々、友人などから「悩み相談」されることがある。 例えば、昨年、病気で夫を亡くした友人は、夫の母と同居している。 92歳になる義母は要介護状態だが、デイサービスに行きたくないと言って、ヨメ(私の友人)に、「悪いところがあるから病院へ連れて行ってくれ」と頼むのだそうである。 比較的丈夫な義母で、ヨメである友人から見ると、取り立てて悪いところはないように見えるのだが・・・、という。 その友人が、義母との同居に耐えられなくなって昔からの知り合いに相談すると「そんなわがままな
先日、句会があった。 90歳のMさんの句がひと際印象的だった。 「生きることが楽しい」という俳句だったので、思わず聞いてみた。 すると、「面倒くさがらないで、何でもやってみるんだよね。 そうするとできるようになってね。できることが増えると楽しいんだよ。」と教えてくれた。 ものすご~くわかりやすくて、参加者全員納得した感じだった。 編み物、ウオーキング、蒸かし饅頭、そば打ち、俳句…彼女の意欲と行動力はすごいなあ…と尊敬する。 私も、「面倒がらず、取り組んでみる」を心が
知り合いに誘われて、4月から「水彩画」を描く会に入った。月2回で、会員は15人くらい、70代以上の方々が多く、先生は月に一度、指導に来てくださるようだ。 あまり縛りがなく、皆さんが楽しそうに描いておられるので私も参加してみようと思った。 4月初めて会に参加したら、いきなり「5月末の展示会に向けて作品を描くように」と言われた。“うそでしょ!?” 中学校以来、絵筆なんか持ったことがないような全くの素人の私が、何年も描き続けている皆さんの足を引っ張っては申し訳ない、とお断り
早朝、田舎町を出て新幹線で東京へ行く。東京からさらに新幹線のぞみに乗って3時間あまり。ようやく岡山駅に着いた。 昨年も一人で金沢・兼六園、水戸の偕楽園を中心に日本庭園を見に行き、今年は岡山の後楽園に行きたいと思っていた。ゴールデンウイークになると新幹線が混みそうなので、その前の4月25日から2泊3日で行ってきた。 「のぞみ」は指定席で、3時間余り本を読んだり、窓の外の景色を見たりして、午後には岡山駅に着いた。 ちょっと休んで後楽園に行った。家族連れや外国人観光客が多かっ
最近、30分フィットネスに行って、70,80代のとても元気な先輩たちを見ていて、一昔前の「高齢者」とは全く違う印象を受けていた。 今までは、「加齢に伴い、体力は徐々に衰えていく」とか「健康寿命と平均寿命との差が女性で12年ある。自立できるのはそれまでの期間しかない」「加齢とともに認知機能が衰えるのは仕方がない」などと思い込んでいた。現在60代の私は、今後体力がますます衰えていくのだろうか・・・と不安になった。 しかし、現実の高齢者を見ていると、「それって、ホントかな?
2月の中旬になるとお雛様を飾る。が、一人で七段飾りを出すのが結構きつくなってきた。 そこで、40年近く前の結婚披露宴で友人たちからもらった「夫婦こけし」を飾ろうと思いついた。 普段開けない棚の中にひっそりと置かれたままになっていた高さ50センチ、幅13センチくらいの2体のこけしを出してきて、床の間に毛氈をひいて飾った。 あらためて見ると、披露宴の最中に書いてくれた出席者の寄せ書きがたくさんあった。 「結婚おめでとう!!幸せになってね○○」「今日の感激を忘れずに ○○」
能登半島の避難所で暮らしておられる人々・・・。「断水状態」「トイレが使えない」「道路が復旧していない」「家がなくなってしまった」など毎日ニュースで見るたびに、1日も早く復興することを祈るしかない。 高齢の方もとても多いようだ。体調を壊すと回復に時間がかかるのではないか。 少しでも過ごしやすいところで暮らしてもらいたい、とひたすら願うばかりだ。 避難所によっては、顔なじみの人たちだからここにいたい、という人々もいるようだ。 生活に大変な不自由しても、人との関係が大事なの
毎年この時期になると、高原花豆(粒が大きい)を煮る。 一晩、多めの水につける。翌朝、あく抜きをする(たっぷりの水に花豆を入れて、沸騰させては湯を捨て、水を入れかえること3,4回。) あく抜きが済んだら、水と豆をことこと時間をかけて煮る。 と、ここで私の秘策は「電気ポット」なのである。 もう使わなくなった広口の電気ポットに沸騰した豆と湯を入れて、保温状態で8時間くらいそのままにしておく。 その後、電気ポットから鍋にうつし、砂糖を加えて煮る。(今回は500gの花豆だったの
昨日、久しぶりに元の職場の同僚4人でランチをした。 80歳のTさんが、「皆に会いたい」と言っていたので、他の3人が都合の合う日を選んでTさんのお宅に近いレストランに集まったのだった。 Tさんは、60代でヒマラヤトレッキングに行くくらい、女性ながらものすごくタフな人だった。60歳で定年退職してから登山、日本画(コンクールで入賞)、俳句・・・と正に「人生を謳歌している、という方であった。「人間はね、“いつも今がいちばん幸せ”って思うのがいいんだって」が口癖だった。 私たち後
昨日は今年の7月に入学したばかりのクラスで、とても嬉しいことがあった。 「連体修飾」を学ぶ課で、「都合がいい・悪い」という言葉がでてきた時だった。 「違う予定があります。一緒に行けません」という意味です、ということをパワーポイントなどを使って頑張って説明していたら、一番前の席にいたMさんが大きな円を描いて、「学校で勉強します」の時間と「友だちと映画に行きます」の時間が同じです、という動作と説明をしてくれたのである。 「そうです!同じなんです」 私は思わず大きな声で言ってし
「ほどよく忘れて生きていく」 ―91歳の心療内科医の心がラクになる診察室― 藤井英子著 サンマーク出版 お彼岸に実家のお墓参りに行った帰り、めったに入ったことのない書店でこの本を見つけた。天国の父母が私に気づかせてくれたような気がして買って来た。 著者は91歳の心療内科医だ。産婦人科医を7年間していたが、子育て(7人)で医師を辞めた。が、育児をしながら栄養学・心理学を学び、51歳で精神科医になる。漢方薬に関心を持ち、漢方専門医としても勤務し、30年以上
8月猛暑のさなか、日本三大庭園の一つ、偕楽園に行ってきた。多くの人は2月の梅の時期に行くのだろうが、せっかく夏休みなのだから、あまり人のいないであろうこの時期、偕楽園の成り立ちを見に行ってこようと思い、ひたすら北関東道・東北道を車で2時間あまり走り続けた。 汗をかきかき、100段近い階段を登って、頑張って常盤神社へお参り。 その後、松の並木をくぐりながらひと気のない梅林を進み、好文亭に到着。 偕楽園を創設した徳川斉昭は、この好文亭に文人墨客のほか、家臣や庶民のお年寄りを
日本語学校:昨日の中級クラスの読解授業でのことだ。 授業時間も終わりに近づいてきたころ、文中にでてきた「伝わる」と「伝える」の違いを説明した。 読解の題材は「昔憧れていた作家の作品だったが、大人になって読まなくなって」しまった。が、その作家の記念館で、「本人が書いた手書きの文字を見て、作家の気持ち、例えば作家が大切な妹を亡くした時、どんなに辛かったか、何を感じたか・・・など“手書きの文字の持つ力”を改めて感じた」というような内容だった。 一通り読解問題としての授業を