重文の「蟹の器」の、気になる裏側はどうなっている?
重要文化財に指定された近代以降の作品が勢ぞろいした、東京国立近代美術館開催の『重要文化財の秘密』が5月14日に閉幕。同企画展で展示されていた作品が戻ってきて、東京国立博物館(トーハク)の常設展で展示されていました。
2023年6月26日現在、《褐釉蟹貼付台付鉢》と《鷲置物》の2点が並んで展示されています。
■超絶技巧 その1:蟹
初代の宮川香山さんが作った《褐釉蟹貼付台付鉢》ですが、個人的には、それほど心踊る作品ではありません。もちろん鉢に貼り付いた蟹の姿は、とても精緻に再現されていて「すごいなぁ」とは思います。ただし「これは欲しい!」などとは思えないんですよね。
とはいえ、宮川香山さんが主に活躍した明治時代には、なんとか日本の産物が海外から「日本ってすごい!」という評価を勝ち取らなければいけない時代だったでしょう。そんな折に、宮川香山さんの作品は、まさに外国人を驚かせるために有用だったはずです。それだけの技工が詰まった作品……ということは理解できます。
今回の蟹の鉢も、外国人を強く意識して開催されただろう、第二回内国勧業博覧会に出品されたものです。あの牧野富太郎さんが、土佐から初めて上京したのも、この第二回内国勧業博覧会を見に行くというのが、目的の一つでしたね。牧野富太郎さんも、この蟹の鉢を見て「すげぇなぁ」と驚嘆したかもしれません。
わたしの評価とは別に、確実に「すごい」作品であることは間違いありません。こうして目の前で見ると、本当の蟹さんが貼り付いているかのようです。
宮川香山さんは、蟹の他にも、鳥などの立体装飾を伴う作品を多く作ったそうです。より細密な表現を身に着けるため庭に鷹や熊を飼っていたと、Wikipediaには記されています。え? 熊を? と思わず読み返してしまいました。
同作品を見るのは、これが3度目になります。これまで全く関心がなかったため、じっくり見たことがありませんでした。今回、解説パネルを読むと「二匹の蟹が付けられています」とありました。「あぁそれで足が多くて、ごちゃっとしているのか」と納得。
トーハクでは現在、《褐釉蟹貼付台付鉢》を、360度の周囲からぐるりと見回せる単独ケースに入れいます。
せっかくですから、ぐるりと一周してみました。
そして裏側から見た姿がこちらです。正面から見ると、蟹の造形ばかりに目が行きがちですが、裏から見ると、釉薬の付け方が独特なことに気が付きます。この方、蟹などの造形以外もすごい人だったんじゃないかなぁと思うんですよね。むしろ蟹以外について、知りたいなぁと思いました。
■超絶技巧 その2:鷲
蟹の鉢のすぐ近くには、その約10年後に作られた、鈴木長吉さんの《鷲置物》が、こちらも単独ケースに入れられて展示されています。こちらはたびたび、じっくりと見る機会がこれまでもありました。
いつも、この鷲の眼力に圧倒されます。やっぱり絵画もですが、目が重要ですよね。下の写真、少しピンがズレてしまいましたが、眼力の強さは分かりますよね。
ということで、今日は暑かったですね。東京も30℃を超えたとか……。今日はさすがに自宅で冷房を入れました。