詩 半月
今日は半月。
満月や三日月と違い、
半分に切られたように見える
半月は、
落ちたもう片方を
探しているようで、
何か妖しさを感じる。
*
夜の街を車で走る。
昼間の喧噪は、かき消され、
街はガランと静まり返る。
街頭や家の明かりで照らされた、
誰もいない道を真っすぐ走ると、
なぜか後ろが気にかかる。
時折、
ミラーで後ろをそっと確認し、
何もなくてホッとする。
*
僕の記憶の底にある、
夜の闇はもっと濃い。
本当に何も見えなくて、
暗闇に目が慣れて、
微かに浮かび上がる、
気配以外は、
全てが闇に包まれる。
空に月のある夜は、
明るく夜を照らすけど、
見えないものをも照らしそうで、
何か少し怖くなる。
夜の生ぬるいあたたかさは、
夜の闇と混ざりあい、
僕を暗い闇へと誘う。
僕は精いっぱい前を見て、
後ろを見ないようにして、
明るい場所へと走り続ける。
*
誰もいない交差点。
赤信号に止まる僕。
交差点近くの
自動販売機が、
夜の街をあかるく照らす。
誰もいない交差点。
やがて信号が青になり、
僕は走り出す。
静まり返った街。
夜の空には半月がかがやく。