地図をつくる
最近、「本を読む時間が少なくなっているな」と感じていたので、意図的に読書の時間を作るようにしている。
水曜日、池見陽・浅井伸彦『あたらしい日本の心理療法-臨床知の発見と一般化』(遠見書房)を読んで、BCT(ボディ・コネクト・セラピー)の部分をノートにまとめた。これまで、BCT以外のところはかなり斜め読みだったので、良い機会だった。
木曜は、河合隼雄『ユングと心理療法』(講談社+α文庫)を半分読んだ。
自分の中で、ユングと身体志向の心理療法がどのようになじんでいくか、その過程に興味を持っている。
どなたかがまとめたものをお借りするのではなく、「自分なりの」統合、を感じたいと思っている。「統合」なんていうと、大げさな気もするけど。
大学時代の先生の話を思い出す。
その先生は、旧家の長男で、地方から京都に出てきて法学を学ばれたが、その後社会学に興味を持ち、学部に入りなおし(たしかそうだった?)社会学をおさめて社会学の教授になっている方だった。
その先生が、社会学を自分のものにするために、とにかく本をたくさん読んだとおっしゃっていた。たくさんの本を読むうちに、自分の中に社会学の地図のようなものができたと。その地図ができるまでは苦しいが、いったん地図ができあがると、新しく入ってくる知識をその地図のどこに配置すればよいかがわかるようになり、格段に理解が進むようになった、という話だ。
もう何年も前に聞いた話だが、とても良く覚えている。
こうやって改めて書いてみると、特段物珍しい話でもないとも思うが、その時の先生のお話されている姿とともに私の記憶の中に強烈にインプットされている。
先生が、ご自身の体験から強くお感じになったことを話してくださっていることが伝わった。
新しいものに触れたり、新しい場所に入るとき、特に一見異質なものに出会ったとき、先生のこの話を思い出す。
臨床心理に出会ったときも、「まずはマップを作ろう」と思い放送大学で基礎科目を学んだのは、先生のこの言葉があったからかと思う。
年を重ねてからマップを作ることの面白さは、「あらなに?この道はここからもいけたの?」とか、「海の向こうの島だと思っていたあの陸地は、陸続きだったのか?」といった意外な発見があることだ。
伊能忠敬が50を過ぎて地図を作り始めたのも、もしかしたらそういう面白さを感じてのことだったのかもしれない。
知って、体験して、続けてみて、なじませて、地図を作って、それに従って歩いてみて、なおして、また発見して、地図を見直して、歩いてみて…。
そういうことが今とても楽しい。
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