点訳者挿入符(1)(点字のはなし(19))
「かっこ」と、「点訳者挿入符」のお話もしておきましょう。
かっこは、「下がり」のバリエーションでもあるので…。
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日本語には、同音異義語が多いです。
しかし点字は、かなだけで構成されることが多く、同音異義語が区別し辛い表現法です。(実は漢字もありますが、ほとんど使われませんね…)
前後の文脈で判断できれば良いのですが、例えば、「頬骨」と「胸骨」は、どちらも点字では「きょーこつ」です。
そこで、点訳者(文章を点字化する人)によって、その言葉の解説が挿入されることがあります。
挿入する場合は、挿入部分の前後を「点訳者挿入符」という記号で挟みます。
注:以後、点訳者挿入符を『点挿符』と表現する場合があります。
また、このテキストではかっこや点挿符を便宜的に『丸かっこ』で
表現しますが、点挿符に該当する墨字(普通字)は、ありません。
まず、普通のかっこ、丸かっこと呼ばれる記号は、らりるれろの「れ」が1段下がった文字です。
「れ下がり」とか「れ下がりかっこ」と呼ぶ人もいます。
墨字(普通字)は、始まり(開き)のかっこと、終わり(閉じ)のかっこは
形が違いますが、点字は、同じ記号で中身を挟みます。
そして、点訳者挿入符は、この「れ下がりかっこ」を2連続で書きます。
これは、あん摩マッサージ指圧師はり師きゅう師の国家試験で採用されている書き方です。
先ほどの「きょーこつ」の場合は、
きょー((ほほ))こつ
きょー((むね))こつ
とか、
きょーこつ((ほお、ほね))
きょーこつ((むね、ほね))
とか、
きょーこつ((きょーわ ほお))
きょーこつ((きょーわ むね))
などと書きます。
ん?
解説が挿入される「ことがある」?
それに「とか」「など」?
ということは、書き方に決まったルールは無いの?
と思われるでしょうか。
そうなのです!
無いのです!
国家試験の場合は、出題側の意向に沿いますが、
通常だと、点字の途中に解説を入れるか入れないか、
入れるとしたら、どのように書くか、
全て、点訳する人の判断にゆだねられるのです。
文脈から考えて、誤読が起こらないだろうと思えば、つけない。
また、途中に解説を付けると、文章の流れを止めて、かえって読みにくくなりそう…と思えば、つけない。
さらに、点訳を受ける人が解説を必要とするかしないかによっても変わります。何もかも解説されたらかえってウザい!という人もいるのです。
そんなわけで、点訳者挿入符についてのルールは、固定できないのでしょう。
日本点字表記法2018年版でも、さらっと説明されているだけです。
この項、続きます。
By くろうーろん
※こちらは過去にssブログ(2014-01-27 13:00)に掲載されていた記事です。再掲にあたり、一部修正致しました。