点字の数字(6)ローマ数字編(点字のはなし(41))

点字の数字、今回はローマ数字です。
私たちが日常的に計算に使い、日常的に「数字」と呼んでいるのは、「アラビア数字(算用数字)」です。
「ローマ数字」は、時計の文字盤などに使われますが、「アラビア数字(算用数字)」と比べると、なじみが薄いかもしれませんね。

そして…実は…
「ローマ数字」は、点字の授業では、大混乱を招く、恐ろしい(?)数字なのです…。
なぜなら、ローマ数字を知るには、まず、アルファベットの知識が…
あの、みんなが苦手な、あの、指折り数える…
アルファベットの知識が、必要だからなのです…!
(↓読んでネ↓)

注:以下、点字の五十音を「仮名」と表現します。
  数字等と区別をつけるため、便宜上です。ご承知おきください。

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点字のローマ数字は、I(アイ)、V(ブイ)、X(エックス)などのアルファベットを使って書きます。
(50はL、100はC…ですが、ここでは省略します。)

はい、ここで既に混乱された方がいらっしゃるかと思います。
教室ならば、ざわめきます!

「数字なのに、アルファベットを使う…
 だと?」

そうなんです。

墨字(普通字)ならば、上下に飾り線がついた、ローマ数字用の、
1は棒が1本、2は棒が2本…という感じの、あれを使って書きますよね。

でも、点字には、そのような文字はありません。
そこで、アルファベットの「I・V・X…」を使うのです。

つまり、点字では、
 ローマ数字の1 は、 I(アイ)
 ローマ数字の2 は、 II(アイアイ)
 ローマ数字の3 は、 III(アイアイアイ)
……と書いていくのです。

これまでずっと、点字で数字を書くのに「数符」という記号を使ってきましたが、ローマ数字では、「外字符(がいじふ)」を使います。
アルファベットが書けないと、数字が書けないのです。
なんてこった。

また、ローマ数字が大文字の場合は、「大文字符」か「二重大文字符」を使います。
(小文字のローマ数字は、大文字符を付けません。小文字のローマ数字自体レアかも知れませんが。)

参考:大文字符と二重大文字符の使用例
<参考:大文字符と二重大文字符
二重大文字符は「以下全て大文字」の意です。>

アルファベットのアイは、仮名でいうと「お」、ブイは「ひ」、エックスは「ふ」です。これをそれぞれ、外字符の後に書きます。

点字のローマ数字、凸面、1から12まで
<点字のローマ数字、凸面、1から12まで>

 ローマ数字の1 … I = 外字符、大文字符、お
 ローマ数字の2 … II = 外字符、二重大文字符、おお
 ローマ数字の3 … III = 外字符、二重大文字符、おおお
 ローマ数字の4 … IV = 外字符、二重大文字符、おひ
      または IIII = 外字符、二重大文字符、おおおお
 ローマ数字の5 … V = 外字符、大文字符、ひ
 ローマ数字の6 … VI = 外字符、二重大文字符、ひお
 (以下省略)

授業では「ごーろく、ろくろく、お・お・お」等と、
呪文みたいな言葉をつぶやきながら書く練習をしますが、
どうにもピンと来ない方が多いようで、しかもローマ数字は使用頻度が低いので、すぐ忘れられてしまいます。

なお、マスあけや改行をすると、外字符は効力が無くなります。
ローマ数字の後に言葉(日本語)を書く時は、ひとマスあけてから書きましょう。

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これで、点字の数字についてはいったん終了します。
また何か追加すべき事を思いついたら、続きを書くことにします。

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余談その1
 点字に「ローマ数字符」があればいいのに…。
 アラビア数字(算用数字)の、数符の直前に「ろ」と書くとか、
 どうでしょうねえ?
 上に書いた通り、ローマ数字は忘れられがちですので、点訳の時は、
 原文の雰囲気を損なわなければ、アラビア数字に置き換えるのが
 良いかもしれません。その場合は、本文に入る前に「凡例」等で
 「原文はローマ数字だが、アラビア数字を使う」旨を断るのを
 忘れないようにしましょう。

余談その2
 競馬の「ジーワン」の「ワン」は、アラビア数字(算用数字)ではなく、
 ローマ数字です。ということで、
 「ごーろく、ろくろく、れお」と書きたくなるのですが、
 それでは「ジーアイ」になってしまいます。
 「ジー」と「ワン」を区切るために、途中に外字符を入れて、
 「ごーろく、ろく、れ、ごーろく、ろく、お」
 と書きます。
 ただ、それでも「ジーアイ」と読む人はいそうですねえ…。
 ジーワンは、「ごーろく、ろく、れ、数符、あ」でも良いことに
 なっているので、誤読防止にはこっちがいいかもです。

余談その3
 点字ではなく、データのお話です。
 データの世界でも、点字と同じように、ローマ数字をアルファベットで
 書くことがあります。
 ウィンドウズにはローマ数字のフォントが入っていますが、
 入っていない機種では、ローマ数字のフォントが全く別の字に
 置き換わる(文字化け)事があります。
 これを避けるために、あえてアルファベットの「IVX…」を使うのです。

 ただ、これって、画面読み上げアプリを使う方には、
 「いち」は「アイ」、「に」は「アイアイ」…と聞こえるわけで…
 予備知識が無いと、ちょっとびっくりでしょうねぇ…。

by くろうーろん

※こちらは過去にssブログ(2017-02-10 13:00)に掲載されていた記事です。再掲にあたり、一部修正致しました。