点訳者挿入符(2)(点字のはなし(20))

何でも点字にしてみせましょう!
…あ、すみません、嘘です。これ、どうやって点訳するんですか??

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先日、点訳者挿入符について書きましたが…
↓記事はこちら↓

点訳者による解説は、漢字だけに限ったものではありません。
私がこれまで点訳者(ボランティア)の方から相談を受けた中で異色だったのは、「漫画の点訳」です。
パーソナルな点訳では、そういう要請もあるのです。

漫画では、通常の文章では有り得ない文字づかいをすることがあります。
「あっっっ!」
のように、小さな「ツ」をたくさん重ねて、大きな驚きを表現したり。
「あー…」の「あ」の部分に濁点を付けて、いかにも困った様子を表現したり。

<漫画では珍しくない表現ですね!>

しかし、例えば「あっっっ」を忠実に点訳しようとすると、点字では、「あ…」と見分けがつかなくなります。
「あっっっ」と「あ…」では全く印象が違いますから、点訳者が悩むのも道理でしょう。
また、「あ」に濁点は、もちろん点字でも付けられますが、「書き間違いか?」と思われてしまう可能性があります。

私は、点訳者の方に、そのまま点訳しないほうが良いだろうとアドバイスしました。
選択肢は二つです。
(1)「あっ!」と点訳し、点訳者挿入符を使って((原文では「っ」が3つあります))と書く。
(2)点訳者挿入符によってシーンの流れが止まり、面白さが半減しそうなら、「あっ!」だけ書いて、点訳者挿入符も使わない。

「あに濁点」も同じです。普通に「あー」と書いておいて、点挿符を使うか使わないか…二択です。

つまり、流れや勢いを重視するなら、「あえて点訳者挿入符を使わない」という道もあるわけです。
ただし、この場合、事前に、
「この作品内で使われている独特な表現は、点字で表記しなかった」
と、点訳を希望した人に、明らかにしておく必要があると思います。
点訳の依頼者が、「細かいところまで原文と同じように読みたい」「原文に忠実に点字にして欲しい」と思っている可能性があるからです。

一番良いのは、どうするのか(原文重視か、注釈付きか、流れ重視か)、
点訳を依頼した人とされた人とで、しっかり打合せをしておくことでしょうね。

冒頭のご相談については、点訳の依頼者が小学生だったため、点訳者挿入符がかえって邪魔になる可能性が高く、あえて「点挿符を使わない」シンプルな道を選んだようです。

By くろうーろん

※こちらは過去にssブログ(2014-01-30 13:00)に掲載されていた記事です。再掲にあたり、一部修正致しました。