点字の「下がり数字」(その3)(点字のはなし(18))

「教則本には載っていないけど、みんなやっている書き方」。
今日ご紹介するのは…
点字で書く分数について。「下がり数字」の補足です。

注:下がり数字はいわゆるローカルルールです。
  ご紹介するのは、当センターの場合ですのでご注意ください。

前回、省スペースのナンバリングなどに使われる下がり数字は「分数」的なイメージだと書きました。
下がり数字で1と書き、元の位置に5と書くと、
「全5のうちの、1番目」とみなす…、
つまり、下がり数字を使うと、普通字(墨字)の「1/5(5分の1)」と同じとみなす、ということでした。

しかし分数「そのもの」を書く時は、少し話が違ってきます。

墨字(普通字)の場合、分数を横書きで、スラッシュを使って書く時がありますよね。
1/5(いち、スラッシュ、ご)のように「分子を先に、分母を後に」書くと、後ろの数字を先に読んで、「ごぶんのいち」です。

前回の、下がり数字でのナンバリング的な分数の書き方も、このルールに則っています。

<下がり数字で1と、普通の5。5の前には数符を書かない。>

読みは「ごぶんのいち」。
「1」は先に書いてあっても、後に読みます。
5枚中の1枚目も、5冊中の1冊目も、分母の「5」を先に読み、分子の「1」を後に読みます。

もちろん、分数に下がり数字を使わず、数学記号のスラッシュを使って書く人もいます。(ただし、日本語の文章内で、突然数学記号を使うのは、例外的な書き方です。)
数字の1、スラッシュ記号、数字の5 と書いたり、
数字の1、スラッシュ記号、数符を省略して5の本体のみ と書いたりするようです。

<1スラッシュ5。2パターン。>

でも…。

点字は、先頭から順に、なぞって読んでいくものです。
普通字(墨字)のように、パッと見て「分数だ」とは分かりません。
「あ、最初は分子か。後に書いてあるのは分母で…えーと、分子は何だっけ?」
と、指を前の部分に戻す…という読み方は、実はよくある光景ではありますが、非効率的ですし、ちょっと気の毒です。

「ごぶんのいちの確率」と点字で書くとき、
下がり数字やスラッシュを使えば、省スペースだし、間違いではないのですが、
点字の読みやすさを考慮すれば、読む順番の通りに「5 ぶんの 1 の かくりつ」と書く方が良いでしょう。

<6マス増えるけど、下の書き方の方がわかりやすい。>

下がり数字やスラッシュは、省スペース目的で使用されるもの。
省スペースでなくて良いなら、読み手側の都合に合わせて、
前から順々に、途中で逆行することなく読んでいけるように、書く方が良いのです。

by くろうーろん

※こちらは過去にssブログ(2015-01-26 13:00)に掲載されていた記事です。再掲にあたり、一部修正致しました。