泣かんでいい、泣かんでいい
様々な立場の人のいろいろな心模様にそっと寄り添ってくれる「夜廻り猫」という漫画がある。
それがNHKでアニメ化されたと聞いて早速観たのだが、作品はもちろん、エンディングの曲がとても良い。
忌野清志郎さんの『JUMP』という曲を山田孝之さんがカバーして歌っている。
いい曲なので、Spotifyで清志郎さんの原曲を聴いて、ついでに清志郎さんのアルバムを聴いてみたら、これがまたよかった。
夫に話したところ
「あれね。清志郎は三宅伸治とやってて、なんじゃらかんじゃら〜」
と清志郎さんの音楽と三宅伸治さんとやらのギタリストについて、詳しく話し始めた。
ふんふんと聞いていたが、あれ?その人知ってるよ、と思い
「その人って頭に、はちまきみたいなの巻いてる人でしょう?」
と質問してみた。すると夫は
「…それ、マーシーな…真島昌利、もうRCでもなく、ブルーハーツとクロマニヨンズやで。」
と教えてくれた。まぁどちらもパンク界隈の人だからね、間違えやすいよね。と思った。
次の日、夕飯を食べながら、私の好きなTV番組「世界遺産」を見てたら、ピサの斜塔が出てきた。
「あそこからリンゴ落として実験したのガリレオ・ガリレイだったっけ?ニュートンは違うよな?」
と夫が聞いてきたので、
「ニュートンは違うんじゃない?ニュートンて、子供の頭の上にリンゴのせて弓矢で射抜いた人だよね?」
と返すと
「それウィリアム・テルな。」
と答えてくれた。ナイスリベロだ。
ウィリアム・テルはもう物理学者でもその界隈の人でもなく、伝説の人だった。
でもリンゴつながりで間違えやすいよね、とも思ったが。
夫は理解し、悟り、もう諦めたのだろう。トンチンカンなことを真顔で言う私を。
もはや腹を立てることもなく、あきれることもなく、笑ってつっこんでくれる。夜廻り猫・遠藤並みに尊い。
「夜廻り猫」を読むと、人はいろんな事情やいろんな環境の中で、それぞれの幸せを求めて生きていることに思いを馳せ、共感し、読む度に大抵泣く。
もし過去の苦しかった自分が、この本と出会っていたらどんなに心強かったことだろう。
「泣かんでいい、泣かんでいい」「おまいさんなら大丈夫」とただ寄り添ってくれる夜廻り猫・遠藤の言葉にどれほど救われたことだろう。
でも今は、ささやかな日常の中で、記憶力の低下と老眼に悩まされながらも、トンチンカンな私の言動に寄り添って笑ってくれる夫に救われている。
ありがたいことだ。
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