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麹菌の酵素による糖化発酵 -発酵の基本知識-㉑
微生物の働きによるもの以外にも発酵は起こります。
三大発酵以外にも、微生物が関与しない発酵で「糖化発酵」というものがあり、これは微生物の発酵に重要な助け役となります。
糖化発酵も重要な発酵のひとつ
発酵に関わる微生物のほとんどは、糖をエサに繁殖しています。
発酵食品生産には重要な三大発酵という形式がありますが、それらの微生物は、糖をエサとして活動、繁殖をつづけています。繁殖の役目をある程度終えると次の発酵へ、バトンが渡されていきます。
実はそれら三大発酵のエサのもととなる糖は、糖化発酵という別の発酵によって生成されています。
三大発酵のスタートは乳酸発酵ですが、乳酸発酵に関わる重要な微生物、乳酸菌も当然糖をエサとして繁殖していきます。
その糖化発酵によって生成される糖は、麹菌が生成する酵素の副産物であるブドウ糖であり、発酵に関わる微生物のエサとして重要な役割を果たします。
糖化発酵のメカニズム
蒸した米に繁殖した麹菌は、でんぷん分解酵素のアミラーゼと、タンパク質分解酵素のプロテアーゼ酵素、脂肪分解酵素のリパーゼなどを生成します。
培地である米をでんぷん分解酵素のアミラーゼが分解し、ブドウ糖を生成します。
このブドウ糖は、三大発酵の最初の発酵、乳酸発酵をおこなうための乳酸菌のエサとなります。
また、乳酸菌が乳酸発酵を終えた後にも、ブドウ糖は残存していますので、その次の発酵である、アルコール発酵を行うための酵母のエサとなります。
発酵における麹菌の役割
麹菌の役割は、麹菌そのものが発酵を行うことではなく、麹菌が生成した酵素が糖化を行うことにあるといえます。
日本の発酵食品は麹を使用することが多いのが特徴ですが、この麹の役割は麹菌が生成する酵素が、でんぷんを分解することにより、次のステップである乳酸発酵を始めるための準備運動なのです。
糖化発酵から三大発酵へ
アミラーゼ酵素が十分にデンプンを分解してブドウ糖を生成すると、空気中や食材の中の乳酸菌が乳酸発酵をはじめます。
やがて、乳酸発酵が進み、乳酸菌が十分に増えると、増殖した乳酸菌は自身の生成する乳酸により死滅していきます。
その後、宿主がいなくなった培地には、酵母菌が住み着くようになります。
乳酸菌が死滅した後も、ブドウ糖は残存していますので、そのブドウ糖をエサに酵母菌が炭酸ガスとアルコールを生成します。
酵母菌が役目を終えると、次に酢酸菌がやってきて住み着きます。
酢酸菌は、酵母菌が生成したアルコールと、残存したブドウ糖をエサに酢酸発酵を行います。
酢酸発酵には、酢酸菌が生成され、やがて酢が生まれます。
そうして発酵は、微生物の共存関係とバトンリレーのような絶妙な受け継ぎで成り立ち、行われていきます。
この行程は必ず、乳酸発酵、アルコール発酵、酢酸発酵の順に行われ、逆向きに行われることはありません
培地は米以外でも糖化発酵が行われる
麹菌は主に米に繁殖させたものを米麹といいますが、麹菌の培地が米以外でもでんぷん質であれば糖化発酵は行われます。
たとえば、さつまいもやカボチャなどの野菜でもデンプンの分解は行われます。
サツマイモを麹菌のアミラーゼ酵素が分解すると、芋が溶けたようにとろみが出てなめらかになります。このような性質を利用し、調理などに活かす方法は数多くあり、レシピも多数開発されています。