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乳酸菌 -発酵の基本知識-⑩

発酵食品に使われる菌の中で、わたしたちの食生活に最も身近に関わっている菌といえるのがこの「乳酸菌」でしょう。

乳酸菌とは、糖類を分解して乳酸を生成する真正細菌類の総称で、棒のような形の桿菌や丸い形の球菌があり、その分類は多くの属にまたがっています。

乳酸菌が生成する乳酸は、pH値が2.0~2.5で、その値を低下させる特徴があり、食中毒菌、腐敗菌などの、いわゆる食中毒菌や腐敗菌などの人間にとって有害な微生物は、酸性の耐性がなく、乳酸菌が優位な条件下では繁殖することができません。

従って乳酸菌によって発酵したヨーグルトや漬物などは、保存性が高まり長期の保存が可能なのです。


形状による乳酸菌の分類

乳酸菌は多くの種類が存在し、現在でも約250種類以上の種が正式に乳酸菌として認められています。

ヨーグルトなどで知られる乳酸菌は主に「ラクトバチルス属」という乳酸桿菌で、人や動物の腸内にも多く生息しています。

また、植物の表面にも生息しており、漬物を作る際にはその常在菌が活躍します。

このほか、ヨーグルトといえば「ビフィズス菌」などを思い浮かべる方も多いかと思いますが、厳密にいえば、現在では乳酸菌とは切り分けて位置づけされています。

とはいえ、ビフィズス菌は乳酸を生成するという意味では乳酸菌に含まれることもあります。

ビフィズス菌は「ビフィドバクテリウム属」の乳酸桿菌で、通常乳酸菌は通性嫌気性であり、空気が存在する環境でも繁殖はしますが、ビフィズス菌は偏性嫌気性菌で、空気のない大腸にのみ存在します。ヨーグルトなどに入っているビフィズス菌はそれらの亜種で、ヨーグルト製造の際に添加したものが多くなっています。

味噌、醤油、漬物などに多い「ラクトコッカス属」は塩分濃度の高い環境下でも繁殖することができる乳酸球菌で、テトラジェノコッカス ハロフィルスなどは15%の塩分濃度でも発酵、醤油や味噌に独特の香味を与える事に役立っています。


発酵形式による乳酸菌の分類

l  ホモ発酵型乳酸菌 乳酸を生成・・・・・・ラクトバチルス属

l  ヘテロ発酵型乳酸菌 乳酸と酢酸を生成・・・ビフィズス菌など


乳酸菌の共生

ヨーグルトを作る場合、複数の乳酸菌を組み合わせ、混合して作ることが多く、菌を共生させることでたがいに必要とする栄養素を補完させるため、混合した場合のほうが発酵の進みが速いとも言われています。

それぞれの菌は特性をもち、現在はその菌が持つ特徴を生かした機能性ヨーグルトを各メーカーが開発、発売しています。

既成のヨーグルトを種菌とし、自家製ヨーグルトを作る際は、種菌に存在する乳酸菌によっては製造工程においての特殊な環境下でのみ繁殖する菌もあり、機能性を期待する場合に家庭においては、期待した機能を持つ菌をもったヨーグルトを作る事ができないこともあります。


動物性乳酸菌と植物性乳酸菌

現在盛んに言われている「動物性乳酸菌」と「植物性乳酸菌」の違いですが、生育する場所による分類であり、生物学的分類による違いはありません。

たとえば「ラクトバチルス属」の乳酸菌も種類によっては動物性と植物性と分けられます。


生きてお腹に届かなくても摂取することには意味がある

乳酸菌はそのほとんどが酸に弱く、時に自分自身が生成する酸によって死滅してしまうことさえあります。

従って、口径摂取したヨーグルトの殆どは胃酸によって死滅してしまいます。

死滅してしまった乳酸菌は当然ながら生きて腸まで届くことはなく、一見意味のないことのように思えますが、乳酸菌の菌体は生死の状態に関わらず、腸内の常在菌のエサとなりえます。

また、仮に生きたまま腸まで届いたとしても、その菌が腸内に留まり生育し続けるかどうかについては、残念ながら詳しいことが証明できるまでは至っていません。

このことから、菌体そのものを摂取することに大きな意味があり、植物性、動物性に関わらず、その人自身の身体にあった菌を選ぶ、ということが大切ということになります。


乳酸菌はひとことでいっても様々な種類が存在します。

商品を購入する際に何を選んだらいいのかわからず迷った時は、自分の目的にあった菌、求める機能をもった菌を選ぶ、ということからはじめてみてはいいのではないでしょうか。

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