納豆の歴史と種類 -発酵の基本知識-㊲
納豆は日本古来の伝統食であり、その歴史の詳細は不明ですが、可能性としての起源は縄文から弥生の頃まで遡ります。
米と大豆の栽培が行われていたため、稲わらの納豆菌によって納豆が生まれていた可能性と、飛鳥時代になると聖徳太子が愛馬のエサの残りの煮豆を稲わらで保存したところ納豆になり、そのことが伝わったという説があります。
平安時代になると藤原明衡が当時の生活や風俗を記した「新猿楽記」という書物に「精進物、春、塩辛納豆」と記されており、納豆の文字が初めて登場することとなります。
奈良時代には、中国で修業をした禅僧が「塩辛納豆」の製法を持ち帰ります。
塩辛納豆とは納豆菌ではなく、コウジカビを煮豆に繁殖させたもので現在の納豆のような糸引き納豆とは別のものです。
現在のような糸引き納豆の詳細な起源は不明ですが、資料として最古のものは、室町時代中期の御伽草子『精進魚類物語』となっています。
戦国時代には、味噌と同じく武将のタンパク源や、スタミナ源となり、江戸時代になると、糸引き納豆が広がりを見せ、京都や江戸の市中に納豆売りが毎朝納豆を売り歩き、朝食に食されることが定着していきました。
納豆の種類
納豆には大きくわけて2つの種類に分類されます。
なじみのある糸を引く「糸引き納豆」と、糸をひかない「塩辛納豆」があります。
糸引き納豆
丸大豆納豆
大豆を丸ごと煮て納豆菌を繁殖させ発酵させた納豆。最も消費されています。
栄養価も豊富で、ひきわり納豆よりも食物繊維量が多いのが特徴です。
粒の大きさもさまざまで、大粒、中粒、小粒、極小粒などがあります。ひきわり納豆
大豆を炒ってから洗く砕き、表皮を取り除いてから煮て、その後納豆菌を繁殖させて発酵させます。消化がよく、納豆独特のにおいも抑えめであることから納豆が苦手な人でも比較的食べやすい仕様になっています。五斗納豆
山形県の米沢地方の郷土食で、ひきわり納豆に麹や塩を混ぜ、樽に仕込んで発酵・熟成させたもので、塩辛のようにご飯と一緒に食したり、お茶漬けの具として用います。こうじ納豆とも呼ばれます。似たものでは「雪割り納豆」というものがあります。そぼろ納豆
茨城県の郷土食で、納豆と切干大根をたれで和えたものです。茨城県ではよく食されており、キムチ入りなどの種類も豊富です。
塩辛納豆
納豆菌ではなく、麹菌を用いて煮た大豆に繁殖させ、発酵させています。その後、塩などで味付けをし、乾燥させたものです。夏だけの時期に仕込み、仕上がったものは味噌の風味に近く、天日干しと発酵を繰り返し、色が黒く塩辛いのが特徴です。
京都の大徳寺納豆、天竜寺納豆、静岡の浜納豆、などが知られています。
乾燥納豆
納豆を乾燥させたもので、糸をひかないのが特徴です。
戦時中には軍用食として用いられ、戦後も栄養食として利用されてきました。
栄養素は通常の納豆と変わりありませんが、栄養価の数値は高くなっており、特に食物繊維やミネラル分は、通常の納豆よりも高くなっています。
製法は、天日干し、油であげたものなどがありますが、天日干しのものには、ナットウキナーゼが生きているため、ナットウキナーゼの効果を求める場合は、天日干しでつくられたものを選ぶとよいでしょう。