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醤油 -発酵の基本知識-㉖

醤油とは

日本を代表する発酵調味料であり、和食の基本調味料のひとつ。
「さ・し・す・せ・そ」の「せ」は醤油のことをさしています。
※「さ」砂糖、「し」塩、「す」酢、せ「醤油」、そ「味噌」

大豆と小麦を主原料とする醤油麹に食塩水を加えて発酵させ、出来上がった醤油もろみを搾った後に出来る液体叙の発酵調味料です。

※そのほかに魚醤と呼ばれる魚介類を主原料とした発酵調味料がありますが、この場合同じ醤油でも製法や原料などが全く異なるために、別N項目で既述することとします。


醤油の種類

  • 濃口醤油

  • 淡口醤油(関西地方)

  • たまり醤油(東海地方)

  • 再仕込み醤油(中国地方)

  • 白醤油(東海地方)


<魚醤>

  • いしる(北陸地方)

  • しょっつる(秋田県)

  • いかなご醤油(香川県)


和食ブームの裏にある醤油産業が抱える問題

「和食」が世界文化遺産に登録され、ミラノ万博の後押しと海外での健康ブームの追い風により、海外では醤油は「ソイ・ソース」と呼ばれ、海外輸出量はこの20年で2倍になるなど右肩上がりを見せています。

その反面、国内では、食の欧米化が加速し、和食離れが著しく、醤油メーカーは戦後の60年間で1/4にまで落ち込み、出荷量も20年間で30%減となり、購入量も含め現在も減り続けています。

醤油生産量の全体の80%は業務用として消費され、家庭用の消費量は、わずか残りの20%程度にとどまっています。


醤油の魅力

醤油の魅力、美味しさはなんといっても、香ばしい香りと、香りにそそられる食欲への連想、食材へ足されるうまみの成分と味わいではないでしょうか。

醤油は醸造過程における3種類の微生物の働きによって作りだされ、さまざまな料理との相性のバランスを絶妙なまでに仕上げる手助けをしています。

  • 麹菌
    原料中の小麦デンプンを、醤油用の麹菌のアミラーゼ酵素が分解し、ブドウ糖を生成、大豆のたんぱく質を麹菌のプロテアーゼ酵素が分解し、アミノ酸を生成します。このほかに麹菌は多くの酵素を作りだします。

  • 乳酸菌
    醤油用の麹菌の酵素、アミラーゼ酵素が分解し、生成した糖をエサに、乳酸菌が活動、乳酸発酵を行い、乳酸や酢酸などの成分に変化させます。この乳酸発酵により、醤油の味に深みが加わります。

  • 酵母
    アミラーゼ酵素が生成した糖、プロテアーゼ酵素がタンパク質を分解し、生成したアミノ酸などをエサに酵母がアルコールや香り成分を生成します。醤油らしい香りはこのときに作られ、醤油のもろみが出来上がります。


醤油に含まれるバランスのとれた五味

五味とは、ヒトが舌で感じることのできる味覚で、醤油はこの五味のバランスが非常に優れています。

  1. 甘み
    醤油の甘みは、小麦のデンプンが酵素によりブドウ糖に変化することで生まれます。塩味の角を和らげ、全体に丸みを帯びた柔らかい味に仕上げます。

  2. 酸味
    醤油の酸味は、乳酸菌による乳酸発酵で生まれます。甘み同様、塩味を和らげる効果のほか、味を引きしめる役目があります。

  3. 塩味
    醤油の塩分は種類にもよりますが、14~19%の間で、海水の約5~6倍にもなります。(海水の塩分濃度はおよそ3%)
    しかし、不思議な事に、海水の方が塩辛く感じます。それはアミノ酸や乳酸などの成分に塩味を和らげる効果があることから、そのように感じるのです。

  4. 苦み
    苦み成分は、醤油の成分にも含まれていますが、微量であることから直接感じることはありません。ですが、それは醤油に「コク」を与える隠し味のような役割を果たし、バランスのよい仕上がりになっています。

  5. うま味
    醤油のうま味は、大豆と小麦のたんぱく質が、プロテアーゼ酵素により、アミノ酸に分解されることで生まれます。
    中でもアミノ酸中のグルタミン酸はうま味の主成分であり、昆布などにも含まれる旨味成分と同じものです。

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