ねんざは、治ったあとの微調整がパフォーマンスを左右する
駆け出しの頃、ある競技の選手を診たことがあります。まだ10代でしたが、全国大会の常連になるくらいの優秀な選手でした。
・変形してしまった足首
足首が痛くて動かしにくいというので診たのですが…。
痛いとか動かないというレベルではなく、足首が完全に変形していました。組織の肥厚で足首のクビレは失われ、可動域は狭く、動く方向もおかしい。
当時の自分にできる限りの施術をしましたが、焼け石に水。結局は20歳になる前に引退したそうです。
彼女の足をダメにしたのは、根性的指導によるねんざの積み重ねでした。
ケガの直後は安静にしているのですが、痛みが引いたらすぐ練習。筋肉も関節も固さを残したままの練習で、すぐにまたねんざ。その繰り返しで足を壊してしまったのです。
・ねんざの治療は、治ってからが本番
ねんざは、関節に強い力がかかることで、靭帯がダメージを受けたものです。(受傷直後の一般的な治療については「RICE処置」を調べてください。これを知っているかいないかで、治りの早さが違います)
受傷直後は誰でも安静にできるのですが、問題は治りかけの時。
痛みが引いた段階で、治ったと判断して、練習を始めてしまうことが多いのです。
ねんざに限らず、ケガをした場所の腫れは、血液が集まって組織を修復している証拠。しかし、ついでに余分なところにまでタンパク質が沈着することがあります。その沈着で組織に癒着(貼り付き)が起きて、可動範囲が制限されるのです。
ここで全力の練習を始めると、体重をうまく支えることができず、ねんざを繰り返したり(いわゆる「ねんざグセ」)、成績が伸び悩んだりします。
競技に復帰する前に、可動範囲の制限をとらなければなりません。
・可動域の回復と、可動方向の確認
まず必要なのは可動域の回復。自分でやる場合には、痛みが出ない強さで根気よく動かして、可動域を広げてゆきます。
ついで重要なのが動く方向の確認。
関節の癒着は部分的に起きることが多く、足首の曲がる方向を微妙に歪めてしまいます。特に多いのが、内くるぶしの周り(かま足の記事を参照)と、足首の前面です。
足先の動く方向、ねじれ、動きすぎ(一部が固いと、補うために他が動きすぎることがある)をチェックして、動きの少ないところを集中的に広げてゆきます。
直後の調整が大事ですが、受傷からあるていど年月が過ぎた場合でも、施術で柔らかくすることができます。目の前で変化が出るのは、施術する側にとっても楽しいです。
・選手生命を決める足首
テレビでフィギュアスケートの選手を見ていると、デビュー当時は、みんな柔らかい足をしています。着地も柔らかく、ちょっとしたブレも軽く調整できる。
競技生活が長くなるにつれて少しずつ足が固くなってゆき、足に力を入れてブレを支えるようになります。やがて着地の衝撃が大きくなってくると、引退の時期。
足首の状態は、選手生命の長さも決めます。ねんざを軽く見ることなく、足を大事にしてください。
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