縮地、浮身の基礎になる「水鳥の足」
甲野善紀門下の用語に「水鳥の足」があります。
私が入門した当時は基本として教えられていましたが、その後、他の技術に発展・吸収されて聞くことがなくなりました。
足を地面から浮かせて、足の位置を替えたり滑るように移動したりする方法です。
・跳ばないで、足を浮かせる
水鳥の足の理屈は、飛行機を使った無重力体験に似ています。
飛行機を高いところからまっすぐ降下させると、機内で数十秒だけ無重力を体験できるというアレですね。
私たちの身体は、常に重力によって下に引っ張られています。その力に対抗して身体を支えているのが足。
身体を重力にまかせて落とすと、落ちている間は足で支える必要がなくなりますね。そのコンマ何秒かは、足を自由に動かしたり、移動の距離を伸ばしたりできるというわけ。
身体を落とすには、足を引き上げたり、体幹を縮めたりと、その場に応じて使いやすい方法を用います。
・ジャンプとの違い
ジャンプと似ていますが、いくつか違いがあります。
ジャンプでは、足の筋肉を緊張させて体幹を跳ね上げた後、足が地面を離れます。
水鳥の足では、身体を落とし始めた瞬間に足が地面を離れるので、浮くまでの時間が短く、予備動作が少なくなります。
また、ジャンプでは跳ね上げの力を受けとめるため体幹を固める必要がありますが、水鳥の足では柔らかいままでも浮くことができます。
一方、身体の落ちる僅かな距離を利用するので、浮いている時間はジャンプに比べるとかなり短くなります。
・どんなふうに使う?
実際には浮くというより、体重の負荷を減らして地面との摩擦を少なくする感じで使うことが多いです。たとえば
・前進するときに身体を沈めれば、滑る距離が伸びます。
いわゆる縮地の入り口に当たるでしょう。
・摺り足、歩き足ともに、身体を少し浮かせると滑らかさが増します。
・組技などのとき、踏ん張ること無く足の位置を変える事ができます。
・浮身との関係
その他、個人的に感じているのは、浮身の基礎としての役割。水鳥の足の練習をしていると「空中感覚」とでもいうべき感覚が育ってきます。
浮身の定義は人によって異なりますが、私は
「作用・反作用を自分の身体内で処理して、地面との関わりを最小限にすること」
だと考えています。
(詳しくは 正中線とは何か?どう使うのか⑤~無足、浮身、モーメント)
水鳥の足を使っていると、身体内で反作用を処理することに慣れるので、地面を踏みしめなくても動ける能力が育ってきます。
これは、浮身の入口になるでしょう。
「縮地」として距離を伸ばす技術として語られることが多いのですが、浮くことの多彩なメリットについて、もっと語られてもいいと思います。
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