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身体ってなんだろう ~ 寄生虫フクロムシはどこまで「生きている」か

BSフジの科学番組「ガリレオX」、2月12日の放送で扱っていたのが寄生生物、フクロムシでした。その生態があまりにも強烈だったので、書かずにいられず。(テレビを録画でしか見ないので、話題が遅れています)。

・フクロムシとは

フクロムシはカニに寄生する甲殻類で、カニのお腹のところに袋状の姿でくっついています。外から見えるのはほぼ卵巣のみ。本体は、カニの身体内にあります。

甲殻類なので、生まれた時はカニ等と同じように殻のあるプランクトンです。何回か脱皮の後「カニに管を刺して、自分の中身を注入する」という冗談のような方法で寄生します。

・解剖すると

番組では、フクロムシの本体を見るためにカニを解剖しました。卵巣を取り除き、カニの腹を切開。どんな虫が出てくるかと思ったのですが、甲殻類の殻どころか、身体らしいものさえ見えません。見えたのは、カニの内臓に絡みついている黄色い糸くずのようなもの。
この糸くずが、フクロムシの本体なのです。

姿はこのYou Tubeで。もっとはっきり写っているのもありましたが、グロになるのでこれにしときます。

左端のソーセージっぽい形をしているのがメスの卵巣。その横についている草の根のようなものが本体です。目などの感覚器も、筋肉も消化器官もなくなり、ただ卵巣に栄養を運ぶ管になっています。
ちなみに右端はオス。こちらはメスの卵巣の中に住み、精子を作るためだけの器官に成り果てているとのこと。
この状態で、カニの栄養を奪いながら産卵し、子孫を残してゆきます。

・身体って何?

この生き物を見て、身体ってなんだろうと思いました。

身体を考えるとき、どうしても人間基準で考えがち。
見て、聞いて、反応して、動く。それが身体。

しかしフクロムシは、カニに自分の中身を注入するとき、卵巣と栄養を運ぶ管以外のすべてを捨ててしまいます。人間で言えば、生殖器官と血管だけの身体。
これは身体なのか? それとも「身体の一部」なのか?

・どこまで生きている?

『HeLa(ヒーラ)細胞』という有名な細胞があります。1920年に生まれ、31歳で亡くなった女性のがん細胞なのですが、死に絶えることなく、増え続けています。ポリオワクチンの開発など、実験に使われることも。

この場合、細胞は生きていても、女性は亡くなっていると考えますよね。
では、どれだけ残っていたら、生きていることになるのでしょうか。

生殖機能と卵巣だけになって生き延びたら、生きていると言えるのか。
フクロムシと人間とは違う生物だとわかっていても、そんなことを考えてしまいます。

ここまで書いても、まだ頭が落ち着かないのです。



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