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兄とノートと貧困と。

兄は菩薩のような、仏のような人だった。その分生まれつき人生に試練が多く、この世に適していなかった。

こんばんは。当方発達障害持ち(ASD、ADHD併発)の20歳の女。働き盛りの年齢ではあるが諸事情により生活保護を受給している。

兄の事は以前のnoteにも書いてるので時間があればぜひ読んでほしい。

確か兄が中学2年生の頃だったか。学期末になったので授業ノートを提出しなさいと言われたが兄は出さなかったそうだ。それだけならきっと先生に注意されて成績が落ちるだけなのだろうが、何故か母が学校に呼び出された。

先生の話によると兄はノートを写して、ノートのページが無くなったら以前の板書を消してその上から書いていたそうで。以前から兄は癖なのか、小さな薄い字で文字を書いていたのだが理由がそこで分かった。後から消しやすかったのだな、と。

母伝いに聞いた上に昔の事なのであまり詳しくは覚えていないが兄は「お金が無いからノートを買ってと言えなかった」と母と先生に伝えたらしい。その後母は余りにも哀れに思い、兄を連れて街の大きな文房具屋に行ったそうだが兄はほとんど欲しがらなかったそうだ。それでも、と聞いて唯一欲しがったスティック型のハサミを買ったらしい。

おそらくこういう物

兄はLD(学習障害)があり、普通ならしないだろうという事…今回で言えばノートを消してその上から書いたり…をしたりしていた。うちにはお金が無いからと母は常々言っていた。それをとても真面目に、そして深く受け止めていたからこそ出た行動なのだろうと思う。それ以降家には常に5冊ほど新品のノートが常備されるようになった。

もやしと豆腐と白米が食卓のメインに居た私達の家庭、所謂貧困層はあらゆる部分から自らの自由をすり減らしていく。お金という概念により無意識の妨害…透明なボードが作られ、ボードが無くなってもそれ以上飛べなくなるノミみたいに未来に希望を持てなくなる。

現在兄は何をしてどこで働いているのか、元気に生きているのかすら知らない。ラインを既読無視してくるからしつこく噛み付いたら相手にされなくなってしまった(自業自得)きっと面倒な妹だっただろう。私は兄の性格につけ込んで良いように言い包めようとしていた時期があった。そんな妹を大事にしようなんて思うはずもない。

とりあえず今は兄が虫歯になってないか、職場で嫌な人に嫌なことをされていないか、バランスよくご飯を食べて人間らしい生活を送れているのか…それだけが気になる。もっと大切に、一人の人として尊重して、そして一緒にしっかり笑っておけば良かったなど今になって思う。

もしこれを読んでくれている貴方に兄弟姉妹がいるのであれば、久々に連絡を取ってみても良いかもしれない。


ご一読感謝。

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