見出し画像

背負わせた十字架というと大袈裟だけど【こころのままに、とりとめもなく(6)】

ヘッドホンがカビた。

息子のヘッドホンに黒い汚れがついているのが気になった。近づいてよく見てみると、それは紛れもないカビでした。

「こんなことある?」と笑いたかったけれど、笑えなかった。

「塩、塩」と言いながら、食品棚の下にある電子レンジの扉を開けていた母を見たときくらい笑えなかった。

。・゚・。。・゚・。。・゚・。。・゚・。・゚・。・゚・。

小学校の2~3年ごろから、息子の周りでバトルロワイヤルモードのあるシューティングゲームが流行りました。そのゲームは、ボイスチャットを使い友達と会話をしながら楽しめるものです。

最初は友達の声を聞くだけでプレイしていた息子でしたが、しばらくすると、自分もしゃべりたいからマイク付きイヤホンがほしいと言い出しました。それに、イヤホンをしていないと友達の声が周りにいる家族にも聞こえてしまいます。それも嫌だったようです。

とりあえず、私が持っていたiPhoneのイヤホンを渡してみました。

問題なくイヤホンジャックに端子が入り、楽しく会話を始められるかと思った矢先に、問題が露呈します。

息子は左の耳が少し潰れています。その影響で、イヤホンがうまく耳に入らないのです。

問題解決に購入したのが、ヘッドホンでした。

。・゚・。。・゚・。。・゚・。。・゚・。・゚・。・゚・。

ヘッドホンを手に入れた息子は、ゲームをするときもYouTubeで動画を見るときも、ずっとヘッドホンをしています。

部活帰りで汗まみれのときも、風呂あがりで髪がまだ湿っているときも。

そして、見つかったのが、今回のカビというわけです。

そりゃー濡れた頭にヘッドホンをつけていたら、カビも発生するでしょう。考えてみれば十分に注意できたはずです。

しかし、私には息子に強く指示できない後ろめたい理由があります。

それは、赤ちゃんのころの向き癖をうまく直してあげられなかったことです。

。・゚・。。・゚・。。・゚・。。・゚・。・゚・。・゚・。

息子は第二子で上に姉がいます。娘にも向き癖はありました。いつも下になっている方の耳は、放っておくと閉じた状態でくっついてしまいます。向きを変えてもすぐに戻ってしまうので、下にしてしまう側の頬の下にタオルを挟むなどして向き癖を直していきました。根気よく続けていると、放っておいても耳がくっつかなくなりました。

耳の形は、意外と簡単に元に戻るんだなぁと思ったのをいまでもはっきりと覚えています。そして、この経験が仇となります。

。・゚・。。・゚・。。・゚・。。・゚・。・゚・。・゚・。

息子の向き癖も簡単に直るだろう、耳も勝手にいい感じになるだろうと、向き癖直しの手を抜いてしまったのです。

息子の左耳は、前側に畳まれてしまった娘の耳とは違い、ピタッと頭にくっつくように平たく潰れています。目が悪くなり、メガネが必要となったときも、スッと耳に掛けられませんでした。耳を外に広げてメガネを上から乗せるように掛けます。

メガネを掛け続けていたら、耳自体は少し外に出てきましたが、耳の穴の入口が狭く変形しているのは変わりません。

息子の潰れた耳を見るたび、申し訳ない気持ちになります。今回発生したヘッドホンのカビを見たときも、私のせいだと責任を感じました。

。・゚・。。・゚・。。・゚・。。・゚・。・゚・。・゚・。

いま中学生の息子ですが、今後、スマホを手に入れ出掛けることも増えるでしょう。外出時にヘッドホンでは目立ってしまい、イヤホンを付けたくなるときがきっと来ます。無線のイヤホンではすぐに落としてしまうでしょうから、有線にせざるを得ない。選択肢をなくしてしまった心苦しさを感じながら背中を見送る日々がくるのだと想像しています。

幸い、本人はまったく気にしていないので、十字架とまでいったら大袈裟かもしれません。それでも、私の胸が痛み続けることに変わりはないでしょう。

さて、ヘッドホンのカビ取りを始めなくては。




いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集