「お願い」

あなた太り過ぎよ。
ええ、太りすぎだわ。
どうしましょう。
私あなたが太っているの見るのがいやよ。
お願いだから、私の言うことを聞いて。
え?ほっといて?
それは駄目。だって心配だもの。

 ねえ、聞いて。ちゃんとよ。
私のお父さんね、私が生まれる前からたくさん食べて食べて食べて、とにかく食べることが好きだったの。私が生まれてからはもっと酷くなったってお母さんは言ったわ。甘いものが大好きで、冷凍庫にはいつもアイスクリームが卵の数より多かった。もしも地球に大変なことが起きて何とか生き残ったけど食糧に困ったら私たち家族4人まずはアイスでお腹を膨らます事になるでしょうね。
 お父さんは運動なんて一度もしなかったからどんどんお腹のお肉だけが増えていったわ。そんな姿を見ていて私不思議に思ったのを覚えてる。何であんな甘い食べ物がこんなブヨブヨのお肉になっちゃうんだろって。

怖い。ねえ、あれは悪魔の食べ物よ。

 死んじゃう頃にはぷよぷよのお腹が風船のようにはち切れそうなくらい大きくなってた。寝たきりのお父さん最後にこんなこと言ったわ。
 「もっとお前の成長を見ていてあげたかった」
何よ今更!もう私9歳よ。そんな後悔おかしいでしょって。お父さんの醜い成長を私は見てきたの。だから、あなたにあんな最後にはなってほしくない。

 ねえ、分かるでしょ、自分に正直になるのもいいけど、他人の私のことを信じてみるのもいいんじゃない?楽しいことはないかもしれない。辛いことは沢山あると思う。でも私が手伝うから。
だからお願い。
死なないで。

※コンビニに入ると一目散にアイスコーナーへ。新作あるかなって気になるけど、何回も見るもんだから何にも変わってないんだ。ぐるぐる歩きまわりながら食べる理由を探して頭もぐるぐるぐるぐる。店員の目つきもだんだん変わって視線が痛い。結局疲れて変な客になっただけで何も買わずコンビニを出て行く。そんな日がちらほら続いている。

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