今日の月を見たか 見上げると赤と青の信号が同時に点灯 あいつは急いでいた、止まるはずがないだろ? 空気の波が髪を乱す 今日の月を見たか 公園には男と女 笑い声を包むのは同じ空間の同じ笑い声 素晴らしい愛をもう一度 今日の月を見たか?私は見ていない 星は見えたんだ、でも月はいなかった 明日も見上げよう 無理に出てこなくていいからさ、寒いのは苦手なんだろ? ねえ、いつまでも そう、いつまでも
お盆だから兄に会いに行くことにした。もうずいぶん会っていない。とっくに歳も追い越しちゃって。 兄さん若いままだね。 ねえ、兄さん。今年は私がそっちに行くからさ。 道に迷ったら迎えにきてよ。 また泣いちゃうからさ。 何をしても怒られてばかりで、 たまには優しくて。 学校の友達に自慢なんかしてたっけ。 大好きな兄さん。 また一緒にあの山登ろうよ。 コンビニでピンク色のかき氷買ってさ、 ご飯のお茶碗に出鱈目にだして、 一つを2人で分けよう。 そろそろ
雨は無条件になんでも洗い流すから 流されて綺麗になった私の心はいつ出るかわからない太陽を待って濡れたまま。 少し重くなった心は赤黒い血液をのろまにまさせた。 呼吸がしにくい 苦しい 濡れた心を軽くしたいのに まだ雨は降り続ける。 私の心は濡れたまま? 全て流されて、忘れて 何もかも綺麗にするの? ああ、そんな嫌だな 分かっていたら外には出なかった どんどん下へ下へと流れてる あれ、見えない、聞こえない どこまで落ちたんだろう でも何なんだか居心
あなた太り過ぎよ。 ええ、太りすぎだわ。 どうしましょう。 私あなたが太っているの見るのがいやよ。 お願いだから、私の言うことを聞いて。 え?ほっといて? それは駄目。だって心配だもの。 ねえ、聞いて。ちゃんとよ。 私のお父さんね、私が生まれる前からたくさん食べて食べて食べて、とにかく食べることが好きだったの。私が生まれてからはもっと酷くなったってお母さんは言ったわ。甘いものが大好きで、冷凍庫にはいつもアイスクリームが卵の数より多かった。もしも地球に大変なことが起きて何と
お前は誰だ? 俺はお前のライバルだよ。忘れたの? ライバル?そんなもの俺は知らない。 知らない?悲しいな、そんなこと言うなよ。俺はお前がいたから今もここにいるんだぜ。思い出してくれよ。 知らんものは知らん!さっさとどっかいけ!目の前から消えろ!二度と俺の前に現れるなよ! おいおい、そんな急にどうしたんだ?もしかして本当に忘れちまったのか?嘘だろ。ああ、どうすればいい、何がお前を変えた? 俺はお前を知らない 知らない知らない知らない 俺のことなんか
とても遠くに来てしまったかのように、 僕の周りには僕の知っっているものは何もなくて、 ただ寂しかった。 僕のことを知っていますか? お話ししたことありませんか? いつかどこかで見かけたりしてきませんか? 本当に僕はここにいていいのですか? 僕の知らない場所、僕のことを知らない場所 ここを今日から僕の場所にする。 そんなことしていいですか? 今から僕はここに家を借りて、 冷蔵庫と洗濯機、余裕があれば電子レンジなんかも買おうと思っています。家のことが落ち着けば、この辺りに何があ
古い友達から結婚の報告。 心から嬉しいと思った。 温かい気持ちで溢れて、満ち足りて、幸せだと感じ た。 どうしてこんなに嬉しいのか考えてみたけど 大切な友達だからとしか答えは出ないよ。 今日は本当に気分がいい。 じんわりじんわり体から滲み出ていくものはなんだろう。 おめでとう。やきもちみたいなものはぐっと堪えて、2人を心から祝福します。最高
君が居なくなっても僕は悲しくない。 そんなこと、そばにいる時は言えなかった。 居なくなってわかることの方が心に染みるのはなぜだろう。腐った心が出した答えは、この先君と会えないと決めつける悲しい感情だけだった。 だから今、僕は君と長いお別れをしたんだと思うから。その煙のようなモヤモヤした君で前が見えなくなっても残りの人生生きていく。 そして必ず君の元へ行くから。 どうすればもう一度会えるかな。 もし良かったら君も考えといてくれると助かるよ。 僕はこの世で、君はあの世で と
深い夜とは、結婚を考えているのか彼女に聞いて、分からないと返ってくる。そんな夜かもしれない。 少し間をおいて、特にこだわりはないの、してもしなくてもどちらでもいいの、と彼女は付け加えた 話は長く続かない 彼女はあなたは?と聞いてはこなかった 代わりに「またね」と言って離れていった彼女と、次会う約束はしていない 私はできるだけ高いところに登った。てっぺんから見る景色は見渡す限り光の粒が散らばっている。一粒一粒が鼓動のように揺らめき、輝いていた。 それを見
店内では会話をする者と、しない者で分けると後者の方が断然多く、少数に部類された者の声はしない者の耳に筒抜けであった。 「彼女、俺以外にも付き合ってる奴がいると思うんだ」そうテンは言った。テンは先月健康診断で生活習慣病と告げられたばかりだった。 「確実な証拠はないよ。ただそう思う理由はある。多分変だって言うだろうけど、こうだと辻褄が合うんだよ」真剣な声と冗談とは思えない顔で話しを続ける。 「驚くなよ彼女は、霊に、取り憑かれている。それも顔がクソほどにいいバンドマンの霊
月が好きです 地球からみる月が大好き いつか飛行船にのってあたなの近くへ あなたしかみえないその場所は儚い夢のよう そんな夢をみるだけでどれだけ救われてきたか 小さなわたしは明日もまたあなたの夢をみるのでしょう
霧雨が皮膚の表面を濡らす キャンパス生地は少し湿り、重くなる 鏡は落ちる、蜘蛛は潜む 異なるものが多すぎた 夜の雨を想う ため息で不穏を絡ませ、 そしてまた夜の雨を想った 濡れる皮膚、湿るキャンパス生地 最初に戻るように 私は時間の中を歩いていた 始まりが遠ざかり終わりを見ないまま、 また始まりへ ずっとずっと 私が止まると決めない限りずっと
そこにある、いつもの田圃を眺めると、 昨日と何かが違って見えた。 秋の風が忙しく頬を撫でる。 二度目の稲穂は背を高くし、揺れていた。 世界が変わる儀式のように。 出るものは大胆に、隠れるものは急ぎ足。 私はいつも遅れてしまう。まあいつものこと。 気づいたら冬でもかまわない。 秋は合間でしかないから。 何故?なぜ私は秋に何も想わないのだろう。 もしくは想わなくなったのだろう。 少し寒くなってきた?あれ、まだ暑くない? どっちつかずの裏切り者。 心の準備が追いつかない。
古い錫製の皿に乗せられたサンドウィッチはちょうどいい薄茶色に焦げ目をつけていた。 飲み物にミルクをお願いすると、フランス製の手吹きワイングラスにとろみのある濃いミルクが注がれ私の目の前に置かれる。 昨日からの降り続いた雨は薄陽が差しこみ、太陽が顔を出そうとしていた。 出されたサンドウィッチには、はみ出すほどのレタスと、白身が荒目に潰され、辛子マヨネーズがアクセントを効かせた卵ペーストがサンドされていた。見た目はただのたまごホットサンドなのに想像の何倍も美味しい。なにか
なんだか体が重かった。今日は最近聴くようになったバンドのライブの日。昨日までは夕食を食べすぎるくらいワクワクしていたのに、目が覚めればなんだか憂鬱だった。天気は曇り、グッズを買う列に並ぶには最高の天気。この憂鬱はおそらくこのライブを一緒に共有できるパートナーがいない事だろう。チケットを買った時は誰か誘えば一緒に行ってくれると軽く2枚のチケットを購入していた。それから約二ヶ月、誘えた相手は一人もいなかった。元々友達は少ない方だが、一人くらい誘えるだろうと思っていたのが浅い考え
「ねえララ、そろそろ私達旅にでる時期だと思わない?」 時刻は午前3時を過ぎたばかりでもあり、4時に向かって一刻一刻時を刻んでいる頃でもあった。この提案はこれより早くても遅くてもダメだったと思う。もうこんな時間、まだこんな時間、そんな時刻に私は視線を天井から隣で寝る彼女に移し、自慢の黒々とした瞳を輝かせて言い放つ。それはもう眠ることを忘れてしまった子供のように。 「もう私たち旅をしなくちゃいけないのよ」 そう問いかけた隣で彼女はスヤスヤと目を閉じたままだった。私は何か言