映画レビュー(99)「リバーズ・エッジ」(2018年)
原作は岡崎京子の同名マンガ作品で1993年から1994年にかけて宝島社のファッション雑誌に連載された。
若草ハルナは、自分の彼氏である観音崎にいじめられている同級生・山田一郎を助けたことから、彼と秘密を共有するようになる。その秘密とは、瓦の藪の中の誰とも知れぬ死体であった。
登場人物の十代の若者たちは、だれもがどこかを欠いている。彼らが他者との関係の中で、「自分とは」「他者とは」という自問に向き合う話とでも言えようか。
互いが意図せずに誰かを傷つけている。生きている人との付き合いに忌避間を抱いていた一郎が、それでも他者に心を開き始め、無感動だったハルナが涙を流せるようになったラスト。
随所に挟まれるドキュメンタリー風のインタビューも効果的ではある。山田一郎に一方通行の恋心を抱いていた娘の自死が、彼らの心に負わせたものなど、はっきりとは描かれない。観客に「どう感じた?」問いかけて、答えや気づきは委ねている作品である。
「リバーズ・エッジ」
(追記)
作品の中には、はっきりとしたテーマを自覚して伝えてくるものもあれば、作者自身もしっかりとテーマを把握できず、イメージやセンスで伝えてくる作品もある。当作品には、ジェンダー、片親家庭、ネグレクト、同性愛などの様々な要素が配置されている。ただそれは要素に過ぎず、それがメインテーマではない。あくまでテーマは十代の若者のアイデンティティの模索であろう。
観客が「~なのか」と気づくことによって、「そんなテーマも内包してたんだな、この物語」と作者も気づかされるような作品。
このリバーズ・エッジには、そんな側面もあると思う。
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