映画レビュー(61)「バーバリアン」(2022 監督ザック・クレッガー)

今回はアマゾンプライムで視聴したホラー映画に関して。感心したところを考察。

二転三転するストーリー

 主人公の女性テスが、夜、民泊に到着するところから物語は始まる。業者の手違いでその家が二重に貸し出され、すでに一人の青年が泊まっていた。 
 この始まりから、彼女が謎の青年と同宿することから始まる「サイコ」系ホラーを思わせるのだが、一転、不思議な地下室が現れることで、その青年が最初の犠牲者になってしまう。
 その後、「呪われた家」系になるかと思わせて、「因習の村」系にも見せつつ、「過去から続く猟奇犯罪」系へと変わっていく巧みさ。

不安のミスリード

 ミステリ物語にはミスリードがよく使われる。ミスリードとは読者の予想を誤った方向へ向けることで、これにより「意外な犯人」「意外な真実」を演出する。
 この作品では、不安感や恐怖の根源に対して観客をミスリードしている。
「そうじゃなかったのか!」と気づくと同時に「もっと怖い、もっと不安」という気持ちに落とし込む。その手腕の巧みさ。
 さらに単に怖いだけでなく、その恐怖の根源である存在の「悲しさ」をも描いている。

ここにも潜んでいるジェンダー意識

 詳しくは書かないが、主人公が女性、クソみたいな男性キャラ、母性、といったキーワードがちりばめられていて、現在のアメリカ映画では、このジェンダー系の意識は外せないのだなあと感じた。
 今作では、それが「無理矢理、義務的に入れました」ではなく、作品の深みを増すことに貢献していて、さらに感心した。
「バーバリアン」

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