ブックガイド(176)サバイバー・ミッション

2004年作品

これは掘り出し物だった。
新人捜査官・麻生利津は、先輩の女性捜査官・荻野麻衣の殺人事件の捜査を隠密裏に任される。相棒は対話型AIのドクター・キシモトだ。
作品中では、まだAIという呼称はない。2004年の作品だからだ。ところが、旧さは感じさせない。舞台は大震災で都内がスラム化した近未来(2004年から見て)の東京である。
当初は、人工知能をバディとした警察モノかと思わせておいて最後に大どんでん返しがくる。そこは先日読んだ「地羊鬼の孤独」と似てる。
物語を転がしていく、死者の記憶などを脳から読み取る仕組みなど、医学と工学にまたがるSF的アイデアがなかなか読ませる。
何度も書くが、これが2004年の作品だというのがすごい。

(追記)
実は1990年代から2000年代にかけて、私は抗うつ剤を飲みながら会社員を続けていた。執筆も読書も、ある種お手上げ状態の日常であった。2008年には休職も体験して、2011年に退職した。そこから読書に戻り、執筆を再開したのは2016年だった。
今、遅ればせながら当時の作品を手に取っている。新鮮な喜びを味わっている。

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