ブックガイド(164)「ねじの回転 FEBRUARY MOMENT」(上・下)
時間遡行装置の発明された近未来、人類に良かれと過去に介入した国連は、歴史を捻じ曲げたことで人類絶滅の危機を招いていた。それを修正するために、過去の歴史を正しい流れの適正範囲内に確定していく作業が進められていた。そして、今まさに1936年2月26日の「226事件」がその介入ポイントとなっていた。
この過去に介入するキーマンは、陸軍歩兵大尉の安藤輝三、中尉の栗原安秀、そして陸軍大佐の石原莞爾であった。
国連スタッフ、三人の軍人、誰もが思惑をもって臨むミッションのひりひりするようなサスペンスよ!
やがて、読者は、国連スタッフたちのいる歴史線すら、実際の歴史とは違うことに気づく。彼らが正しいと信じる世界は、本土決戦が行われ、徹底的に破壊された大日本帝国はアメリカの州の一つになっているのだ。
ここまで読んで、私の脳裏に浮かんだのは、フィリップ・K・ディックの「高い城の男」。こちらは、ナチスドイツと大日本帝国が勝利した二次大戦後、北米大陸の東西をドイツと日本に統治されているアメリカの物語である。
「ねじの回転 FEBRUARY MOMENT」は日本を舞台に「高い城の男」的な世界を描いている。こんなすごいSF作品を2002年に書き上げてる恩田陸さんスゴイ。
(追記)
こんな面白い作品をどうして気づかなかったんだろうと振り返ったところ、2002年当時、私はうつの状態がかなりひどくなりかけてたことを思い出した。営業から内勤に変わりWEB系のDやりながら、社内IT化のセクションにも協力していたころで、すでに抗うつ剤をガンガン飲んでいた。
ドラマ原作で佳作入賞は経験していたけど、それから10年以上、名古屋で会社員を続けながら数年に1作ぐらいしか作品は書けず、疲弊していたのだった。当時話題になった作品、まだまだ読んでないもの多いので、今こそ読んでいきたいと思っている。