映画レビュー(81)「ブラック・スワン」(2010年)
サイコ・スリラーっぽく言われているけど、これはサスペンス。
キーワードは「鏡」
劇中でヒロインが観る鏡、窓に映る鏡像など、随所で鏡が登場する。プレッシャーにさらされて不安感で疑心暗鬼になり病んでいくヒロイン自身の鏡像こそが、本当の恐怖のもとなのだという寓意である。
ホラーとは心理状態の寓意
この作品を見て思い起こしたのが、「四谷怪談」である。お岩を死なせた伊右衛門の罪悪感が見せる「錯視」こそが、物語で起きる怪現象の原因になっていて、鶴屋南北の人間心理の理解の深さと近代性に驚かされたものだ。
この映画でも、ナタリー・ポートマン演ずるヒロイン・ニナの不安や恐れが、「錯視」の形で襲い掛かってくる。
監督のダーレン・アロノフスキー、今敏のアニメ作品「パーフェクト・ブルー」からも影響を受けてるらしい。確かに通じるものありだ。
「ブラック・スワン」