ブックガイド(159)「メデューサの首」内藤了
令和元年12月の文庫書き下ろし作品。
帝国防衛医科大学の微生物学者の坂口が主人公。彼は死んだ恩師の残したサンプルから、新ウイルスを発見する。それはインフルエンザの感染力と狂犬病の致死率を併せ持つ殺人ウイルスで、感染した者は凶暴化して、自分の肉体すら貪り食うゾンビウイルスだった。
その危険性故に研究所で処分廃棄したはずなのに、それを手にしたテロリストが全国民を人質に政府に犯行声明を送ってきた。その狙いは!
実に面白い。中央区をロックアウトして感染対策をする光景など。コロナ禍の日本を活写したかのようだが、驚くことに、実際のコロナ禍はこの作品が発行された翌年の令和二年からはじまっている。
言わば、事件を予告した作品とも言える。
今回の作品も、内藤了作品におなじみのキャラの立った登場人物達が大活躍する。大学の門番・自衛隊OBの老人トリオ・ケルベロスとか、毒舌女刑事・海谷とか、元海外研修制生のチャラ君とか。
現在は角川ホラー文庫から買えます。
こんなに面白い作品を多量生産している内藤了さんだが、映像化された作品が藤堂比奈子シリーズだけというのが不思議だ。