ブックガイド(68)「幻象機械」(山田 正紀)
(2004年 07月 04日 「読書記録゛(どくしょきろぐ)」掲載)
日本人に特異的な右脳と左脳の機能差がある。言語脳(左脳)、非言語脳(右脳)の機能分担が、西欧人ほど厳密ではないのだ。
例えばコウロギの鳴き声を左脳で聞く。そして秋の情感を感じる。一方、西欧人はこれを右脳で聞き、単なるノイズとして処理する。
日本文化のワビサビなどは、日本人の脳機能の特殊さが生み出したものなのだ。
その研究から、無中枢コンピュータを構想する大学助手谷口が父の遺品に石川啄木の未発表小説を発見したとき、我々日本人の脳に刻印されていた禁忌の謎が次第に明らかに…。日本人の"正体"に気づいてしまった啄木の、そして彼の運命は。
山田正紀的なアプローチの作品である。啄木の未発表小説と谷口の物語が交互に繰り返される。虚構内虚構を楽しむ構成で、これは当時活字や映画や演劇などで大いに流行った手法である。この物語では幻象機械は「イリュージョンプロジェクター」と呼ばれている。
幻象機械中公文庫
(2023/11/13 追記)
当時、虚構内の虚構というメタフィクションが大いに流行し始めていて、自分も大きな影響を受けた。その頃書いた「毛布の下」というホラー短編は、「昔の夢を見ている自分」を夢で見る、という入れ子構造を生かした作品で、日陰の花みたいな書き手の俺も、流行には敏感だったのねといったところ。↓ こちらに収録してます。
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