休職日記25
朝から同居人氏2がどこかに出かけて行った。
布団の中でもぞもぞしながら、もう仕事に行ったのかなあと思うも、眠気に抗えず、そのまま布団に横たわっていた。
と、思ったら、10分もしないうちに帰ってきて、大きなビニール袋をどん、とテーブルに置いた。
おかえり、どこ行ってたの、と声をかけると、朝ごはんを買いに行ってきた、とのこと。
今日は仕事で、出勤前だというのに、同居人氏2はほんとうにやさしい。
3人分あるから適当に食べな、と言いながら、同居人氏2は、オーブンでパンを焼き始めた。
その匂いと音につられてか、同居人氏1も起きてきた。
おはよう、おはようと言い合うと、同居人氏1、目がむくんでいて全然開いていない。
そういえば昨夜、わたしは早々に眠ったけれど、2人はテレビを見ていたっけな。
そのときに、きっとポテチをつまんだに違いない。
目が開いていない同居人氏1、そんな起きたてほやほやで、こんなことを言う。
何時に家出るの?今から簡単なスープでも作ろうか。
同居人氏2は、8時過ぎくらいに家を出るよ、と言い、同居人氏1は、わかった、ちゃちゃっと作るねと、開いてない目のまま言った。
時刻は朝の7時半。あと30分もないのにスープなんて作れるの、と、内心はらはらしていたわたしをよそに、同居人氏1はテキパキと事を進めてゆく。
このひとは、ほんとうにすごいなあ。
そしてやっぱり、同居人氏1も、やさしいなあ。
なんやかんやであっという間に同居人氏1特製山盛りお野菜のコンソメスープが出来上がり、3人で一緒にもぐもぐ食べた。
コンビニのパンもおにぎりもおいしくて大好きだけれど、こうして一品、手作りの、しかも温かいものがあるなんて、最高だ。
しあわせな朝ごはんだなあと、しみじみ思った。
8時を過ぎたころ、そろそろ行きますか、と言って同居人氏2が立ち上がる。
でもここで、騙されてはいけない。
同居人氏2には、なぞのクセがあって、トイレに行こ〜と言って、トイレに行くふりをしてそのまま玄関を出て行ってしまったり、もう行くから!と言うので慌てて見送ろうとすると、トイレに入っていたりするのである。
なぜか出勤時に、わたしたちを出し抜こうとする。そういうなぞのクセを、同居人氏2は持っているのだ。
だから今朝も、本当に行くの?ほんとうに?と再三確認し、どうやら本当に行く様子だったので、水曜日が回収日であるペットボトルのゴミをたくして、いってらっしゃいと見送った。
同居人氏2が出勤したあと、しばし同居人氏1と同居人氏1の仕事についてなどを話し、わたしは食器洗いと洗濯へ、同居人氏1は仕事をしに自室へと散り散りになった。
こんななんてことない1日のはじまりが、2、3日前から、ようやくおくれるようになった。
それまでは、ただただずっと眠りこけて、強いおくすりを飲んで眠りこけて、泣いて、眠って、の繰り返しだったから、こんな風に過ごせることが、いま、とてもうれしい。
それから、あやしもさんやおだんごさん、バクゼンさんや微熱さんに感化されて、お話を書き上げられたことも、とっても大きな出来事だった。
自分の中には、もうそんな力は微塵も残っていないと思っていた。
それなのに、昨日はどうしてもあのお話を書きたくて、寝てばかりいたわたしが、お昼寝もせずに、ソファに横になることもせずに、最初から最後まで、一気に書き上げることができた。
ああ、生きてるな、自分まだ、ちゃんと生きてるなって、思えた。
今日のわたしは、生きていたいなって、ちゃんと思えている。
朝ごはんはおいしかったし、洗濯物も干せた。洗い物も済ませたし、お風呂にも、1週間ぶりに入れた。
生きててよかったんだ。
そう思うには、充分すぎるくらいの、ふつうの、朝だ。