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シリーズ:じゃんけんなんかじゃ決められない!~よーいどん編~

昨日から始まったシリーズ「じゃんけんなんかじゃ決められない!」の第2弾。
今日は、てんしで行ったページェントの役決めの中で、「星」の役を巡って生まれた、エピソードをご紹介します。
さて今日は、どのように決めることになったのでしょう?


走る速さで星役を決めた2人

星役を巡り、2人の男の子が「やりたい」と手を挙げました。
星役は一人しかなれないことから、どちらがこの役になるのかを決めるため、2人で話し合いが始まりました。
何度か話し合いを重ねた結果、2人は「よーいどん」で勝負をすることに決定。これは足の速い方が星になるということ。星をやるうえで、足の速さは全く関係ないのですが、大真面目な2人。

勝負を控えた2人は、それぞれ全力で練習に取り組みました。園庭の端から端まで何度も走り込みをし、応援する仲間たちから声援を受ける姿は、まさにアスリート! 真剣な表情は気迫十分です。
そして迎えた本番。集まったみんなが見守る中、「よーいどん!」の掛け声とともに2人はスタートを切り、ゴールを目指して駆け出しました。

2人とも、懸命に走りゴールに飛び込み、勝敗が決まりました。
速く走った子が見事に星役を勝ち取りましたが、負けた子も涙をこらえながら、本当に悔しそうでした。

子どもたちの中で生まれた競争という方法。それは大人から見れば素朴で単純で、かつ、ちょっとずれているように思うかもしれません。しかし、自分たちで考え納得し、結果を受け入れるという経験は、彼らの成長にとって大きな一歩だったのではないかなと私は考えています。

子どもたちが選んだ「よーいどん」という方法

足が速いのは正義!

「星役を決めるのに、どうして走る速さが関係あるの?」と思う方もいるかもしれません。その通り、特に足の速さと星は関係ありません(笑)
強いて言うなら、この役に必要なのは速さではなく、きらめく星を表現するために、腕を上げながらキラキラと手を動かす持久力の方が、勝負すべきポイントだと思います。 何を隠そう、私も小さいころ星役だったので、腕が疲れてきてどうしても下がってしまった記憶があります。
しかし、子どもたち自身が話し合い、最終的に「よーいどん」で決めることを選んだ背景には、大人はわかりにくいのですが、彼らなりの納得感がありました。

2人がこの方法を選んだのは、足が速いことに価値があるからなのだと思います。
『足が速いのは正義』という時期は、皆さんも経験したことがあるのではないかと思うのですが、彼らにとっても足の速さは、重要な要素で、納得のいく決め方だったのです。

私たち大人は決め方に納得している?

子どもたちが、役とは関係のない方法で役を決めたと聞くと、一見不思議に感じるかもしれません。しかし、私たち大人は、物事を決めるプロセスにどれだけ納得しているのでしょうか。

たとえば、大人が意思決定を行う場面として選挙を挙げてみます。選挙は成人が意思を示す大切な場面ですが、不完全な側面が多いことも指摘されています。「一票の格差」や制度の複雑さが問題視されており、必ずしも全員が納得して投票できているとは限りません。さらに、公職選挙法は複雑でわかりにくい部分があり、選挙にかかる莫大な費用を考えると、本当に公平な方法だと心から言い切るのは難しいと感じます。

そう考えると、私たち大人は、与えられたルールを疑問視せずに従っていることが多いものの、実際には自分たちで納得した意思決定のプロセスを選んでいないことに気づかされます。

大人は意思決定のやり方を自分で決めるということは少なく、『決まりだから』と疑問を持たずに従っていますが、子どもたちが自分たちで話し合い納得した方法を自ら選びました。それが、今回は、『よーいどん』だったのです。
一見大人から見れば理不尽に見えたとしても、そこに2人の納得があれば、私たちが口をはさむ余地はありません。

納得解の重要性

今回の「よーいどん」という決定方法には、子どもたちなりの理由があったのだと思います。
自分たちで考えたルールに従い、結果を受け入れる覚悟もありました。このプロセスを通じて、彼らは単に役を決めただけでなく、「納得して決めること」や「結果を受け入れる潔さ」を体験的に学んだのだと思います。

こうした経験は、意思決定を行う上で、とても大切な経験になりました。
たとえその方法が大人には理不尽に見えたとしても、子どもたちが自分たちで考え、合意し、実行したことであれば、その過程をしっかりと見守り、応援し、サポートすることが大切だと思います。

今しかない、足の速さが価値とされる時代はもう少し続きそうです。


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