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乳幼児教育学会シンポジウム ~場外編~

本日は、乳幼児教育学会のシンポジウムで登壇させていただきました。
まずは、このような貴重な機会をくださった、香宗我部先生、高橋先生に深く感謝申し上げます。
そして、一緒に登壇してくださった、高橋健介先生(東洋大学)保坂佳一様(Childcareweb社代表)古賀琢也先生(千葉明徳短期大学)深谷ベルタ先生(千葉明徳短期大学)松延毅先生(小池保育園、出雲崎保育園)本当にありがとうございました。

今回のシンポジウムは「プロレスのように意見をぶつけ合ってほしい」と提案された通り、非常に白熱した有意義な場となりました。
参加者同士で深く議論し合うことで、新しい発見と学びが生まれた時間だったと思います。

せっかくのプロレスなので、場外乱闘もいいかな?と思ったので、シンポジウムでは語りきれなかったことについて書いてみたいと思います。


AIの活用事例とその意義

私が行った発表は、向山こども園での事例紹介に焦点を当てました。
発表の中で、AIの活用を以下の3つの分野に分けて説明しました。

マネジメント分野

Googleフォームを使った記録の作成やデータベースの運用や、公式書類作成の補助、文章修正支援などを取り上げました。これにより、保育者の負担を軽減し、効率的な業務遂行を実現しています。

保育活動

子どもたちの考えを視覚的に表現するためにDALLE-3を使った事例や、Snowを用いた音楽生成によるアイドルごっこなど、子どもたちの創造性を引き出す新しい方法について紹介しました。

保護者への情報発信

保育記録のデータベースを活用することで、子どもたちの成長や日々の様子を個別に共有することが可能になりました。また、動画のアフレコやBGM作成にもAIを活用して、情報発信をより魅力的なものにしています。

NI(自然知能)の意義とAIとのバランス

NI、つまりNatural Intelligence(自然知能)は人間や動物が本来持つ知能を指し、感情や倫理観に基づいた判断や創造性が含まれます。
今回の議論では、AIの活用がもたらす標準化への懸念や保育者としての「感性」の重要性について、意見が交わされました。
NIがAIに置き換えられることなく、むしろ補完的に使われるべきだという意見が、本編での落としどころだったのかな?と思いました。

多様性の尊重と保育の課題

多様性を尊重することが重要だという意見も多く聞かれましたが、現在の日本の保育の中で本当に多様性が認められているのか、という疑問が私の中では沸きあがりました。
特に、現在の認可基準ぎりぎりの保育者の人数では、子ども一人一人を丁寧に見守るのは難しい現状があると私は感じています。
向山こども園では、基準の約2倍の保育者で保育にあたっていますが、このような環境が標準とはいえません。

現在の保育現場では、多様性が十分に尊重できず、保育者の感性や創造性が発揮されにくい状況があるように感じます。このような前提を共有しない限り、AI導入の議論を進めることは難しく、AIによる効率化と標準化の波に押し流されてしまうのではないかという懸念があります。

私たちは、働き方改革や人手不足、長時間保育、そして多様な社会的要求への対応に直面しており、現場は危機的な状況にあります。
こうした前提を踏まえた上で、
・AIを活用して解決すべき喫緊の課題
・保育の質向上のために保育者の支援をどう行うべきか
という2つの異なる階層に分けて議論を進めるべきだと感じました。

AIの利点を最大限に活かすために

これまで、私たちはNIによって40点から50点程度の初期案をもとに、人間が時間をかけて集まり、60点から80点の成果物を作り上げてきたと思います。しかし、AIや生成AIは一気に80点のものを生み出すことができます。

では、その80点のまま提出してよいかというと、そうではありません。
そこからさらにNIを活用して、100点よりも上、120点を目指すことが、AI時代の新たな考え方となると私は考えています。

保育の現場でAIを活用することで、個々の子どもの成長をより正確に捉えたり、保育者間でノウハウを共有したりすることが可能になります。
これにより、より質の高い保育が実現できると私は確信しています。

結論と今後の議論への期待

AIは保育現場で補助的な役割を果たすだけでなく、保育者の仕事を効率化し、こどもとの関わりや保育者同士のコミュニケーションに時間を割けるようにするツールになると考えるべきです。
ただし、AIを単なる便利で楽をするための道具としてではなく、NIを高めた専門職としての保育者の仕事を、より高度化するための手段として活用する必要があります。

AIとNIが共存し補完し合うことで、保育の質を高める新たな可能性を探るべき時期に来ています。
今後も、AIとNIの共存について議論を深めていきたいと考えています。

皆様からのコメントや質問をお待ちしています。


今の向山の保育の基盤を作ってくださっている高橋先生(左)  尊敬する松延先生(右)

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