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公開保育を終えて:第4弾 行事と遊びは別物か?

今回は、公開保育のAnswer記事第4弾として、ご質問で出た「行事と遊びのバランス」についての質問にお答えします。
特に運動会の練習や、行事のために遊びの時間が減ってしまうことに悩んでいる方が多いようで、複数ご質問をいただきました。
この疑問は、「行事」と「遊び」が別物であるという考え方に由来しているのではないかと思います。とても重要な話題なので、今考えていることを書いてみたいと思います。(考え方が異なる方にとって、不快な内容になってしまっていたらすみません)


行事の種類と役割

今回は、向山の事例も取り上げていただいた、玉川大学の大豆生田先生の編著『園行事を「子ども主体」に変える!』を参考に、行事と遊びの関係について考察してみます。

向山のリトルオリンピックも取り上げていただきました

この本では、行事を4つに分類しています。

  1. 園行事:入園式、卒園式、運動会、発表会など

  2. 伝承行事:七夕、お正月、地域のお祭りなど

  3. 社会的行事:母の日、父の日、勤労感謝の日など

  4. 宗教行事:生誕劇、収穫感謝礼拝など

これらの行事は、子どもたちの日常生活の中で「ハレの日」としてリズムや波を作り出す重要な役割を果たしています。
しかし、日本の保育の現場では、行事が中心となりすぎて、子どもたちが追われるような状況があり、これが課題となっていることが指摘されています。

行事中心の保育が抱える課題

「行事中心保育」とは、年間の保育計画が行事を基に組み立てられてしまう保育スタイルです。
行事に追われるような日々の中で、大人も子どもたちも「やらなければならないこと」として行事に取り組んでしまい、楽しむ余地がなくなることがあります。この結果、遊びと行事が乖離し、行事が楽しめないものになってしまうのです。

保育者としても、行事は保護者に子どもの成長を見せる絶好の機会であり、行事を成功させるために多くのエネルギーを注いでしまう傾向があります。しかし、この行事中心の保育が、子どもたちにとって良いものかどうかは再考する必要があります。

向山こども園の歴史

向山こども園では、昔から行事が子どもに合わせた形で行われていました。例えば、いわゆる運動会を、「リトルオリンピック」と呼んで学年ごとに分けて開催したりしていました。
内容も、子どもの遊びの延長にあるようなものを行うなど、子どもの遊びを中心に行事を組み立てる文化が古くからありました。
そのため、行事に関して、大きく考え方などを変革する必要はありませんでした。

行事を、誇張して良く見せるためのものや、保護者に評価されるために子どもを訓練するようなものではなく、あくまでも遊びの延長線上にあるという考え方が根付いていたのは、本当に幸運でした。
保育のスタイルを変えることもさることながら、行事を変えるというのは、一番ハレーションが起きる部分で苦労するところなので、長年、こどものことを考えた幼児教育を実践してきた先輩方に感謝しかありません。

行事と遊びのバランスの取り方

子どもたちにとって、行事が遊びの一部だと考えると、行事後もその遊びが続いていくことがあります。一方で、行事が一区切りとなって、すっきり遊びが終了する場合もあり、その年の子どもたちの特徴に応じて変わるものだと思っています

重要なのは、保育者が行事と遊びを切り離さず、柔軟に保育計画を調整することです。行事そのものが子どもにとって「やらなければならないもの」ではなく、「楽しみながら参加できるもの」であることが理想的だと思っています。
とはいえ、きれいごとではなく、行事を見て保育を評価されるという側面は当然あります。これは別の記事で書いていますので、よろしければご一読下さい。

遊びから発展する行事の意義

行事が楽しければ、その準備や過程もまた楽しみなものになります。
しかし、すべての子どもが最初からすべての遊びを楽しめるわけではありません。
特に競争や勝負を伴う場面では、最初は消極的な子どもももちろんいます。最初は「やらないで見ている」だけだったり、保育者や友達に誘われて「しかたないからやるか…」といった形で参加を始めることももちろんあります。そういったスタートも自然なことで、決して悪いわけではないと思っています。
しかし、参加してみると実はとても楽しかったと感じたり、次第に夢中になっていくことも多々あります。そういった体験を引き出すためには、遊びの工夫が重要です。

行事というハレの日ならではの高揚感や緊張感が、遊びを特別な体験へと変えることがあります。
行事を通じて新しい興味や楽しみが広がり、子どもたちの中に芽生える様々な感情が、子どもたちを一歩先へと導いてくれると思っています。

そんな行事はやめてしまえ

だからこそ、行事のために工夫された遊びを提案したり、子どもたちのその時の興味とは少し異なる要素が含まれている場合があっても、行事のために練習することが「悪い」とは思っていません。
ただし、最も大切なのは、最終的に子どもたち自身がその行事を、自分たちにとって楽しいものへと変えていき、楽しさを見出せるようにしていくことは必須です。

ちなみに、向山では子どもから、「ね~? これ終わったら遊んできてもいい?」といわれたら、黄色信号だよということをよく言います。
もちろん、ケースバイケースではありますが、こどもに「遊び」と認識されおらず、「こなさなければならないタスク」になっているとしたら、そんな行事はやめてしまった方がいいと私は思っています。
子どもが行うことは見世物でも、感動物語の題材でもありません。
あくまでも、行事は保育・教育活動の中に位置づけられている子どもにとって意義のある大切な時間というとらえを、常に忘れないようにしたいと思っています。

向山こども園では、行事と遊びが乖離しないよう、行事が子どもにとってあくまでも楽しいものであることを大切にしています。
今後も、行事が生活や遊びをより豊かにするための機会となるよう、保育計画を見直しながら、柔軟な対応を心がけていきたいと考えています。

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