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年長児の指導計画と意思決定の枠組みについて

年長児の1年間は、大きな行事や遊びを通して、子どもたちが意思決定や仲間との関わりを学ぶ大切な時間です。
明日から、ページェントの役決めを子どもたちがどのように進めてきたのかについて、シリーズでお伝えしていきたいと思います。

今回はその前段階として、1年を通した指導計画の中で、子どもたちがどのように意思決定する力を育んでいくのかを考えてみたいと思います。


行事から見る1年の流れ

年長児の年間指導計画では、進級直後から始まり、卒園までさまざまな行事を通じて遊びと学びが展開されます。今回はわかりやすいように、主な節目として以下の行事を基に、指導計画を解説したいと思います。

  1. 進級当初

  2. サマーキャンプ(夏休み前)

  3. リトルオリンピック(夏休み明け)

  4. 秋の自由遊び期間

  5. ページェント(冬)

  6. リトルフェスティバル(2月)

  7. 卒園

これらを通じて、子どもたちは少しずつ自分の意思を表現したり、友達との関わり方や自分の意見をまとめ方を学び、対話を通した協同的な力を培っていきます。

意思決定の枠組み:子どもたちの主体性を育てるために

それでは、それぞれの時期どのようなことが遊びの中で起こるようにしているのかを整理してみたいと思います。

1学期:小グループでの遊び

進級後すぐは「小グループ」と呼ばれる、好きな友達との小集団で遊びが進められます。ここでは、子どもたちが安心して意見を出せる環境が大切です。保育者はこの時期、探究心を引き出す仕掛けを用意しつつ、子どもたちが興味を持ったテーマを深め、少し継続して遊びを展開できるようにサポートします。

サマーキャンプ:クラス全体での協力

サマーキャンプ(お泊り保育)では、小グループやクラス全体での話し合いが行われます。ここでは「いいね、いいね」という肯定的な対話を重視します。自分たちが考えた活動を実現し、成功体験を積むことで、子どもたちは「自分たちならできる」という自信を得ます。
そのため、お泊り保育は毎年保育者にとって一番準備が大変な行事になります。子どもたちは、お寿司を作りたい! フルーツを使ったジュースを飲みたい! 夜のショーをしたい! 映画を作って上映したい! 虫をつかまえたい! 夜の動物園を作りたい!…と、1学期中の遊びを総動員した企画を作っていくので、それを叶えるための裏方は、てんやわんやです。
もちろん年長の保育者だけではサポートできないので、全職員 総がかりになります(笑)

リトルオリンピック:議論の深化と否定の体験

運動会に相当するリトルオリンピックでは、議論において初めて「否定」が入る場面が出てきます。また、意図的に今まであまり関わりが少なかった子ども同士が積極的に関わる場を作るなど、人間関係が広がる工夫も取り入れています。

「勝負」というわかりやすい目標を前に、これまでの「いいね!」と共感を積み重ねる議論だけではなく、意見の違いを通じて議論の大切さを学ぶ場面が増えてきます。
これまでは、人間関係を基準に「○○ちゃんが言うならやる」といった発言も見られましすが、全員で目指す「勝利」に向かう中で、自分の意見を言わなければ良い結果につながらないことに気付いていきます。
対立があっても、自分たちの納得できる答えを見つける過程を模索していく姿を大切にしていきます。

秋の遊び:ゴール設定と自分たちでのプロデュース

秋には、自由度の高い遊びの期間が設けられます。
ここでは自分たちでゴールを設定し、それに向かって計画を進めていくことで、遊びを通じた意思決定が行われます。達成感を得る中で、子どもたちは自主性を育みます。
ここでは、興味のある遊びを追求することに加え、遊び切る体験ができればと思っています。自分たちで計画し、自分たちで実行していく。
お客さんを招くこともあれば、自分たちで作品を作って完成!という子たちもいます。
大切なのは、自分たちで目標をもって遊びを進めてみるということです。
これまでの遊びは、目標に向かうというより、遊びそのものを楽しんでいたので、一歩進んだ遊びともいえると思います。

ページェント:枠の中での協力

冬のページェントは、自由度の高い遊びとは異なり、枠組みがしっかりと決められた中で進行します。
ここでは、ある制限の中でどう納得感を得ていくかを学びます。自分の希望通りにならない場合でも、全体としての完成度を目指す協力体験を積んでいきます。
明日からのシリーズでは、子どもたちがどのように意思決定をしていくのか?ということについて、子どもたちの中で巻き起こるドラマを記事にしたいと思っています。

リトルフェスティバルと卒園

卒園前のリトルフェスティバルでは、今までの経験がすべて統合されます。保育者からは

  • 開催場所

  • 一人一人のいいところが出ること

  • 見ている人が楽しいこと

という3つの枠組みだけを提示し、後は子どもたちが進めていくのをサポートしていきます。
子どもたちは、自分たちのやりたいことの追求しながらも、「お客さんは見ていて楽しいのかな?」客観的な視点を持ち、クラスのメンバーに否定されることも経験しながら、一人一人の個性を発揮し、全員で一つのものを作り上げる達成感を得ます。

保育者の役割と子どもたちへの影響

保育者は、遊びの枠組みをコントロールしながら、対話のファシリテーターとしての役割を果たします。子どもたちが安心して意見を出し合える場を作り、肯定的な体験や失敗からの学びを通じて、社会性や自己効力感を育んでいきます。

これらの経験は、明日から紹介するページェントの役決めにもつながり、子どもたちがどのように協力し、自分たちの意見を形にしていくかを見る上での基盤となります。
明日からのシリーズ、どうぞお楽しみにお待ちください。

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