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スマートエデュケーション 公開保育の振り返りシンポジウムを振り返って:「子どもの道具としてのICT」を考える

今日は、スマートエデュケーションさん主催の公開保育で行われたシンポジウムの振り返りをしたいと思います。
個別の質問にも、できる限り答えていきたいと思いますが、まずは、シンポジウムで、今回の研修で学んだことや発表したことなどをまとめておきたいと思います。

横山先生のご発表

今回講師として来園してくださった宮崎県の保育施設を中心に活動されている横山先生が、ICT活用について実践的な事例ついて発表されました。
園庭の有無に関わらず、保育の質を高めるための取り組みが紹介され、その中核には「自由選択」「アート」「外遊び」「散歩の充実」を柱とした環境構成がありました。

例えば、恐竜に興味を持つ子どもたちが主体となり、ジオラマ製作や博物館訪問を経て、ストップモーション動画を作成する過程では、ICTを「道具」として活用。保護者とも映像を共有したことで、保育がより伝わっていったというお話が印象的でした。
また、パン屋さんごっこでは、電子決済の「ペイペイ」風システムを子どもたち自身が再現し、画面をタップすると、自分たちの声で言った「ペイペイ!」という声が聞こえてくる仕掛けは、自分たちの体験したことを、遊びの中で再現する新たな方法として、とても興味深く聞かせていただきました。

横山先生は、ICTは保育の補助的な道具であり、自然体験や遊びの中で自然に取り入れられることが重要だとおっしゃっていました。
さらに、「子どもも保育者も楽しめる環境づくり」を目指し、行事や保育内容を見直すことで、主体的な学びを促進しているというところも、向山と同じで勇気づけられました。

ICT活用についての豊かさもさることながら、こどもへの眼差しや、保育に対する姿勢が丁寧で素晴らしいのだろうなと感じさせられる発表で、豊かな保育実践を聞かせていただけた、貴重な実践報告でした。

この日の保育の中で見られた「ICTと遊びの融合」

シンポジウムの中で「子どもの道具としてのICT」について、保育におけるICTの可能性が具体的な事例とともに議論されました。
その中で特に興味深かったのは、子どもたちがアナログとデジタルを自然に組み合わせながら遊びを深めていた姿です。

公開保育の中で撮影された写真を交えながら、この日、保育の中で行われていたことの共有がなされました。
私は、最近、建築関係のことなどがあり、なかなか保育を見ることができない日々が続いているので、一参加者として新たな発見もある時間でした。

トイレットペーパーの芯でボールを転がす遊びが、タブレット上で再現されることで、新たな視点やアイデアが生まれていたという実践の共有では、ICTは単なるツールにとどまらず、創造力を拡張する役割を担っていると感じます。

また、ジュース屋さんごっこのメニュー表作りや、アイドルごっこのグッズ制作では、子どもたちがICTを使って自分たちの活動を表現しているのも、我が園ながらおもしろなと思いながら報告を聞きました。

これらの実践は、向山の保育者の努力もさることながら、スマートエデュケーションさんがリモートで保育実践のヒヤリングに基づくアドバイスを定期的にしてくださったことで、保育者が子どもたちの自由な発想を尊重しつつ、ICTを環境に自然に溶け込ませられたのだなと思いました。

保護者との連携で広がる可能性

ICTの活用において保護者の理解と協力は欠かせません。
シンポジウムでは、保護者向け体験会を通じてICTの有用性を伝える取り組みが紹介されました。
横山先生のご発表でも紹介され、向山でも真似て取り入れてみた、子どもたちが作成した音や映像の作品をQRコードなどを活用して家庭に共有する方法はとても魅力的です。保護者が子どもたちの遊びや作品にぐっと引き込まれる感覚を味わえるため、家庭と保育がつながる新たな伝達方法として、とても有効だと感じました。

保護者の中には「タブレットは動画を見るだけのもの」という固定観念を持つ方もおおくいます。
これは、大人自身が、消極的で受動的な使いかたしかしていない、あるいはできないことに起因する部分もあるかと思います。しかし、デジタル技術は、積極的、能動的に自分を表現したり、アナログではできなかった部分を発展させられる、強力な道具になります。
こうしたデジタル技術の特性を伝えるためには、デジタル技術が子どもの表現力や主体性を引き出す道具であることを具体例や、実際に作ったものを体験的に伝えていくことが重要だと感じました。

地域とつながる 横山先生:地域とのコラボレーションの可能性~

1. 講演会を通じた発信

横山先生の園では、講演会を地域向けに開催し、幼児教育の重要性を広めています。その際、企業から協賛を募り、講演会の開催を支援してもらうことで、保育園と企業双方にメリットを生む関係を築いています。

「著名な講師を招いて、地域の人々に幼児教育を知ってもらう」こうした活動は、地域住民の関心を引き、保護者だけでなく広い層に幼児教育の価値を訴求する機会となっています。また、企業との連携により、講演会の広報がさらに効果的に行われるのも大きなポイントとのことで、目からうろこのお話に、少々面喰いました。

2. 食育と企業の連携

さらに衝撃的だったのは、地元の漬物屋さんとのコラボレーションです。保育園の栄養士と企業が協力し、「子どもが食べられる漬物メニュー」を共同開発する試み。地域企業が持つ専門性を活かしながら、子どもの健康を考えたメニュー作りは、教育の枠を超えた新しい挑戦は、思いもつきませんでしたが、ぜひやってみたい!と思いました。

3. 外部施設の活用

大規模ではない園であるため、大きなイベントは外部の施設を利用するという柔軟な姿勢も印象的でした。
夏祭りを商業施設で開催することで、駐車場問題や収容人数の課題を解決しつつ、商業施設側にも集客のメリットを提供する。この「持ちつ持たれつ」の関係は、地域の発展にも寄与していると感じました。また、企業とのWinWinの関係が築かれていることで、地域により溶け込んでいく素晴らしい試みだと思います。

地域との関係づくりがもたらす未来

横山先生の取り組みを通して見えてくるのは、「地域を巻き込む」という視点の重要性です。保育園という枠を超え、地域社会全体にとっての価値を提供することで、より強い信頼関係を築くことができます。

幼児教育の現場は、地域にとって不可欠な存在です。しかし、その重要性が十分に理解されていない現状も事実です。だからこそ、横山先生のように、外へ向けて声を上げ、つながりを広げる努力が必要だと感じました。

地域とつながる 向山:コミちゃんについて

地域との連携もまた、保育の可能性を広げる鍵となります。
シンポジウムで取り上げられた「こみちゃん」制度は、地域の多様な人々を「先生」として迎え入れ、子どもたちと活動をともにする取り組みです。
音楽や料理など特技を持った人々が園に足を運んでいただくことで、園内に地域を作ることができればと思っています。

AIの可能性と懸念を見極める

今回の議論の中で、AI活用についても様々な意見が出ました。
特に、開発する可能性もあるという、子どもが描いた絵にAIがコメントを返す技術の紹介は、大人にも子どもにも新しい視点をもたらす可能性を感じました。
また、生成AIを活用したアイドルごっこの事例では、その有効性も議論されました。
既存の楽曲やダンスをモデルにすると、子どもたちの自由な発想が制限されてしまうことがあります。しかし、AIが新しい楽曲や視覚素材を提供することで、子どもたちが自らの表現を広げる手助けができるのではないかと私は考えています。

AIはあくまで「補助」として活用し、保育者や子どもたちの主体性を損なわないようにすることが重要です。

最後に

このシンポジウムを通じて再確認したのは、ICTやAIが保育において本当に価値を発揮するのは、それらが「子どものための道具」として正しく使われるかどうかということです。
つまり、デジタル技術を使うかどうかという議論以前に、保育が充実しているかどうかが、非常に重要なことなのだと改めて感じました。
技術の進化に流されるのではなく、それをどう使うかを問い続ける姿勢が保育者には求められるのだと強く感じました。

ICTは子どもの創造性を引き出すだけでなく、保護者や地域とのつながりを強化する可能性を持っています。
これからも現場の実践や議論を通じて、子どもたちの未来を支える道具としてのICTのあり方を追求していきたいと思います。

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