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Today is ...


「日記を追いかける #HNKS09 」のエピローグ。





もし今日が自分の1日なら、私はどのように過ごすのだろうか。


「Today is」というのは、前に放送していた朝ドラ「スカーレット」に出てくるスター芸術家の作品だ。「もし今日が○○の一日なら、私は・・・だろう。」という言葉と、その芸術家の絵が左側のページにあり、右側のページは白紙という構成の絵本のようになっていて、その白紙のページに「自分ならどう過ごすか」というのを書いていく、読んでる側も作品に参加することができるようになっている。それが、とても面白い。この本が実際に売られてたとしたら本気で買いに行ってたし、何なら私はこの本が好きすぎて自分でオリジナルの「Today Is」をつくってしまった程だ。




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何故そんなにハマってしまったのか。もちろん「Today is」そのものにも惚れたのもあるが、朝ドラの中で「Today is」が果たした役割がものすごく心に刺さったのが大きい。この朝ドラを通して伝えたかったことそのものだと私は受け取った。それは、メッセージというものの「本質」が見えた出来事だったと同時に、「スカーレット」という朝ドラの素晴らしさ、素人ながらこの朝ドラの脚本と演出に、嫉妬するほど感動したからだ。

メッセージを伝えようとする時、「何を」伝えるのかを人は一番に考えるものだろう。しかしきっと伝えたいメッセージを「どうやって」伝えるのか、その手段の方が何倍も大事なのである。どんな想いがあろうと、伝わるか伝わらないかは受け手次第であり、いかに受け手に伝わる状況をつくれるか、そこが伝え手が携われる最後の領域なのである。

その領域づくり、「どんな形で相手に受け取ってもらうか」、それこそが一番のメッセージであると、この「Today Is」を通して教わったような気がしている。つまりメッセージとは、言いたいことを伝えるまでの言葉のプロセスなのである。「ある音楽の歌詞がすごく好き」と感じることは誰にでもきっとあるだろうが、その歌詞の伝わり方は実は、メロディーラインありきなのである。私が言いたいことは、そういうことだ。


さて「Today is」がどのような役割を果たしたのか、これはそのあらすじである。





『主人公・川原貴美子の息子「川原武志」は、陶芸家の父や母の影響を受け、陶芸の道を進むことになる。美術大学で陶磁器学を学んだ後、地元に戻り窯業研究所で陶芸家になるための修行を始める。

「皿の上に雪を降らせる」というコンセプトで研究を重ね、新人コンクールに作品を提出した直後、体調の異変を覚え病院に向かうことに。血液検査の結果、医者から「慢性骨髄性白血病」と診断され、余命は2年と宣告されてしまう。』



今でこそ、「白血病」は治療できる病気というイメージを持っている人が多いだろうが、80年代はまだまだ骨髄移植のドナーの数が少なかった時代で、治らないのが当たり前の時代、助かる方が珍しかった。武志が助かる道は骨髄移植しかなかったが、家族や友人と協力しドナーを探すも型が合う人は見つからなかった。



『武志は初め、自身が白血病であることを他人に打ち明けることを拒否していた。自分を病人として扱ってほしくなかったのだろう、その事実を知るのは武志と母のみ、離婚していた父・八郎には伝えていなかった。

離婚後、長い年月をかけて新しい関係を築こうと、少しづつ家族の仲を取り戻していった最中の出来事であり、二人をつないでくれたのは紛れもなく息子の武志であった。それでも、武志は父には病気のことを言いたくなかったのだ。

武志の誕生日が近づき、父と母2人で会うことになった日に、母は父に息子が白血病であることを伝える。その時何も知らない父が持ってきた誕生日プレゼントが、「Today is」という本だった。』



何故この本を送ったのかというのは、冒頭でも述べたように家族みんなで憧れているスター芸術家・ジョージ富士川の作品であるからだ。主人公である貴美子のターニングポイントで度々登場し、諭しもせずただ自分の進んでいる道を見せてくれる人であり、一度自宅で絵具と戯れる即席ワークショップを開いてくれたことがある、飾らなく等身大なこの物語の重要な存在なのである。 

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『八郎は、自分の息子が余命2年の病気であること知り、大きく動揺する。ついこの間まで、いつも通り楽しい話していたのに、このような事態になったことを飲み込めないまま骨髄移植の検査を受けるも、型は一致しない。

貴美子も、誰にも話したくないと武志が言ってたことをしっかりと伝えた上でこのことを伝えたので、一度八郎は武志に会わないまま自宅に戻る。なので「Today is」は母の手で入院中の武志に渡された。



八郎は、その後またすぐに貴美子のもとを訪れ、今の会社を辞め、信楽に引っ越すことを検討していることを伝える。少しでも武志の近くにいて、自分にできることをしたい、とそう思ったからだ。

それでも、貴美子はそれを止め、あの時武志にプレゼントしたはずの「Today is」を渡される。そこに武志の想いが書いてある、とそう言って。
武志はこの本をもらった数日後に、白紙であったページに自分の想いを書いていたのであった。



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もし今日が自分の1日なら
私はいつもと変わらない1日を過ごすだろう。

もし今日が友達の1日なら
私は友達といつもと変わらない1日を過ごすだろう。

もし今日が君の1日なら
私は君といつもと変わらない1日を過ごすだろう。

もし今日が誰かの1日なら
私は誰かといつもと変わらない1日を過ごすだろう。

もし今日が母の1日なら
私は母といつもと変わらない1日を過ごすだろう。


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「武志は、いつも通りの毎日を望んでいる。」


貴美子はそう言った。』

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『この本に想いを書いたことを通して、武志は「自分の病気のことみんなに言っていいもいい」と言った。「みんなに会いたい」と、そう言った。それから多くの友達や知り合い、親戚のみんなが病室に訪れるようになった。



武志の高校からの一番の親友たちが、ある日貴美子達のもとを訪れ、遠くの都市でもドナーの声をかけをしたいと、その許可をもらいにきた。一生懸命声をかけたもののドナーを見つけられないことに責任を感じ、何かしたいのだ、と両親に訴えたのだ。

その時も二人はもう充分やと伝え、この本を見せる。それを読んだ友人たちに「今まで通り頼むな」と今度は八郎の口から伝える。』





『その後、武志は入退院を繰り返しながら、父が試みたが実現できなかった、皿の中に水を描くという挑戦をし、見事に成し遂げる。皿の中で水の動きを感じるような波紋の模様が描かれいるだけでなく、完成した後もかすかに鈴のような音が鳴った作品になった。これは貫入という、高温で陶器を焼いた後に急速に温度が下がることでひびが入ることで、音を立てる現象だ。


「完成したと思っていたのに、終わっていなかったんや。
 生きているんやな」


と驚く武志に、貴美子は笑ってこう告げる。



「作品は生き物や」






その作品を信楽の陶芸展に出展し、またそこにジョージ富士川が現われる。貴美子や武志の作品を見た後、「そうや!」いつもの調子でまた即席のワークショップを始める。

大きな白い紙が貼られた板の中心に、ジョージ富士川が言葉を書く。






          「もし今日が私の1日なら」






何でも自由に書いていい、と大勢の子供や大人が白紙の部分に自分のやりたいことを書いていく。そこに武志も参加し、黒のペンをもち言葉を書く。







       「いつもと変わらない1日は特別な1日」


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いかがだっただろうか。私なんかの拙い文章で申し訳ないが、これが「Today is」の凄さ、「スカーレット」の奥深さなのだ。私はこれをもっと早く全世界の住人達と共有したかった。コロナで誰とも会えず、いつの間にか遠くになってしまった思い出を、この前日記を見返した時にふと思い出した。

「いつもと変わらない1日は特別な1日」と普段通りに生きていては、ほとんど気づくことができない。武志のように、急にあと2年しか生きられないと思った瞬間に、いつも通りの毎日が二度と取り返せないことに気づき尊く、愛おしく感じる、日々とはきっとそういうものなのだ。


しかし、私はそれでは嫌なのだ。毎日が変わらないこと、繰り返さないこと、その瞬間になって初めて感じて、感謝するようにはなりたくない。生きているうちに、会えてるうちに、その想いを伝えなければ、相手にはずっと届かなくなってしまう。死んでしまったら声すら届かなくなってしまう。思っていることを相手に伝えられる、というのは当たり前なんかではなく、むしろキセキに近いのだ。


私は生きている間に、大切な人には思っていることを伝えたい。生きているうちに励ましたり、バカにしたり、感謝したりしたい。それを何度でも伝えたい。


「好き」と「ありがとう」は、100万回言ってもいい言葉


好きなラッパーの言葉だ。人に感情を持つことに何より満たされていたことを、このコロナ禍の1年間で思い知った。

別にそれらの感情は死期にならないと見えないこないものではなく、毎日の中でも気づけることなのだ。今この瞬間でも気づくことができる。だからこそ、思っていることを会えているうちに伝えられるように、私は日記を書くのだ。その気づきを習慣化して、いつでも、誰にでも、感情を持てるようになるために。




いつもと変わらない1日は、何にも代えられない特別な1日なのだから。






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