句集を読む:『氷湖いま』
『氷湖いま』鈴木総史 2024ふらんす堂
著者は1996年東京生まれ、本書は著者の第1句集、全272句
[章立て]
一章 火に飢ゑて
二章 ぬるき葡萄
三章 夏瘦の指
四章 楽譜
五章 塔の全貌
六章 こゑ満ちて
[好きな句 15句]
氷湖いま雪のさざなみ立ちにけり
地吹雪のなか詩にならず死にきれず
鮭のぼる故郷の川をうたがはず
返信はなし壺焼を待つあひだ
ワイパーの拭ひきれない霜の花
短日の家まで着かぬバスばかり
終電の手すりつめたき聖夜かな
常闇の湖しか知らぬ氷下魚かな
老ゆるとふ美しさあり尾白鷲
積雪や音奪はるる靴ばかり
えぞにうや錆びし農具が畑の端
しまえびを剝く夏瘦の指うつくし
蒲公英にまみれてゐたる消火栓
実柘榴や触れればくづれさうな家
悴むや本は開けば古書となり
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最後までお読み頂き、ありがとうございました。