【佐藤究『テスカトリポカ』登場人物メモ・感想】燦然と輝く黒い太陽
先日、佐藤究さんの『テスカトリポカ』を読んだ。面白かった。
読んでいたときに登場人物が多くて混乱することがあったので、ちょこちょこメモを書いていた。本記事にはそのメモを整理したものと感想を書く。
ネタバレ注意!
登場人物
こちらのブログの登場人物一覧をかなり参考にさせていただいた。
[名前] / [コードネーム]という形式で記載している。
※序盤〜中盤のネタバレ注意!
バルミロ・カサソラ / 調理師
主要人物の一人。カサソラ兄弟の三男。
頭の回転が早い上に抜け目なく、冷徹で凶悪。
かつてメキシコの麻薬組織:ロス・カサソラスに所属していたが、敵対していた麻薬組織に自らの組織を壊滅させられ、兄弟、妻、子供を皆殺しにされる。
メキシコ脱出後に来日し、末永と共に血に塗れた資本主義ビジネスを始める。
「粉」などとも呼ばれるが、日本ではコードネーム「調理師」を使うことが多い。
自分の家族を皆殺しにした組織を殲滅し、縄張りを奪回することを目的に動く。
祖母リベルタの影響でアステカの神に心酔している。
P72にて名前初登場。
土方 小霜 / 断頭台
主要人物の一人。メキシコ人の母と川崎の暴力団幹部の間に生まれた少年。
精神年齢は幼いが、2メートル以上の身長と超人的な身体能力を持つ。
手先が非常に器用であり、木に模様を掘るのが得意。
ある出来事でバルミロに見いだされ、コードネーム「断頭台」を授かる。
P29にて名前初登場。
末永 充嗣 / 蜘蛛
ある事件がきっかけで日本を追われた元心臓血管外科医。コカインを常用している。
偽名「タナカ」で闇の臓器移植コーディネーターをしているときにバルミロと知り合い、血に塗れた資本主義ビジネスを始める。
心臓血管外科手術に対する強いこだわりがある。いつでも手術できるよう指先の感覚を研ぎ澄まし、全身の筋肉を鍛錬している。
P176にて名前初登場。
野村 健二 / 奇人
川崎市で闇医者をしている元麻酔科医。
フェンタニルなどの病院の薬品の横流しがバレて永久追放された。
コカイン常用者。コカインをやりすぎて、左右の鼻腔を仕切っている鼻中隔が崩れたことがある。
後にバルミロたちのビジネスに加わる。
P180にて名前初登場。
宇野 矢鈴 / 呪術師
NPO法人〈かがやくこども〉の職員。元保育士。コカイン中毒。
NPOの活動の一環と信じて、言われるままに全国の無国籍で虐待されている子どもを回収し、寺の地下にある秘密施設にて世話をする。
P225にて名前初登場。
座波 パブロ / 陶器
技術力の高いナイフ職人。
父はペルー人、母は日本人で沖縄育ち。正式な本名は「清勇・パブロ・ロブレド・座波」
妻と娘を沖縄に残し川崎へ上京。生活に困窮してるときにバルミロにナイフ職人としての腕を買われ、彼の下で働くことになる。
P299にて名前初登場。
井川 徹 / チャターラ
高い身体能力を持つ178cm・154kgの巨漢。
残忍な性格であり、およそ良心というものを持ち合わせておらず、簡単に人を殺す。
バルミロに殺し屋候補として見出され訓練を受ける。
P311にて名前初登場。
仲井 大吾 / マンモス
191cm・123kgの巨漢。学生時代にボクシング国体2回出場、消防士としても働いていた。
バルミロに殺し屋候補として見出される。
P348にて名前初登場。
大畑 圭 / ヘルメット
177cm・79kgと殺し屋候補の中ではやや小柄。
元暴走族リーダーで傷害致死事件を起こし服役。出所後は闇賭博の胴元で稼ぎ、収益の1/3を兄貴と慕うチャターラに収めていた。
バルミロに殺し屋候補として見出される。
P348にて名前初登場。
フラビオ・カワバタ / 電気ドリル
19歳の日系ブラジル人四世。近視であるために銃の扱いに不向きと判断され、殺し屋候補には入れなかった。
普段は、銃器の準備や殺し屋候補の訓練時の銃声をかき消すために重機で騒音を立てるという役目を担っている。
P346にて名前初登場。
夏 / 灰
化粧っ気がなく地味な装いの中国人女性。
宇野矢鈴と共に子供たちの世話をする。
P248にて名前初登場。
順太
宇野矢鈴が回収してきた子供の1人。
P465にて名前初登場。
ベルナルド・カサソラ / ピラミッド
バルミロの兄。カサソラ兄弟の長男。
ジョバニ・カサソラ / ジャガー
バルミロの兄。カサソラ兄弟の次男。
ドゥイリオ・カサソラ / 指
バルミロの弟。カサソラ兄弟の四男。
イシドロ
カサソラ兄弟の父親。自らの能力を過信し麻薬密売組織を甘く見ていたため処刑される。
リベルタ
カサソラ兄弟の祖母、イシドロの母。
アステカの神を信仰している。キリスト教徒の夫に強制されて改宗するも、隠れて信仰を続けていた。
孫たちにアステカの歴史や神、儀式の意味など様々なことを教え、大きな影響を与えた。彼らの精神的な拠り所でもある。
P90にて名前初登場。
土方 興三
川崎市の暴力団幹部。だんだんシノギがけずれなくなり生活に困窮していく。
コシモの実の父親であり、ルシアの夫。
ルシア
コシモの母親。メキシコのクリアカン出身。
兄を麻薬密売人に殺され、クリアカンを捨てて最終的には日本に辿り着く。清掃業務、賭博の従業員を経て土方興三を頼る。
感想
※ここから先は本編を全部読んだ後に閲覧するのをオススメします。
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アステカ、麻薬密売、臓器移植ビジネス等々……死ぬほど調べて書いたんだろうなって思わされてしまう情報量に圧倒された。凄い。中盤あたりからぐっと引き込まれてするする読めた。終盤めちゃくちゃ面白かった。
・バルミロ
やってることと性格が最悪すぎて絶対に遭遇したくないキャラクターなんだけど、高い知能と暴力で目的へ向かって突き進む姿が終始魅力的だった。彼の元で働きたくなる人の気持ちも少し分かる。
強烈な生い立ちを考慮すると、なぜそういう人間になってしまったのかも一定の理解はできた。
バルミロが日本に来るまでの話は、GoogleMapで確認したり、現地の風景はどんな感じか写真を見たりしながら読んだ。
普通に読むより時間はかかったが、彼と一緒に旅をしているような感じがして楽しかった。
・コシモ
ずっと受け身で生きるコシモ。徐々に大きな闇に飲まれていく様は手を伸ばして止めたくなる。
何か歯車が違えば、バスケットボールプレイヤーやナイフ職人として活躍する未来もあったんだろうか。
終盤、コシモは順太との交流を経てようやく自分で考えて動き始める。
少し唐突には感じたが、バルミロの言葉に心のどこかで忌避観があったから変わることができたのかもしれないな、と思った。
バルミロとの最終対決は予想していたとはいえ、やっぱり熱くなった。
最後、コシモと一緒にいるのは誰なんだろう。順太?
・パブロ
彼が出てくるシーン全部好きだ。
コシモとの関わり合いで苦悩する姿が魅力的。
最期のシーンもかっこよかった。
・宇野矢鈴
トイレで着替えたりするのかな、と思ってたらコカイン吸い始めるシーンが唐突で笑ってしまった。好きなシーン。
連れてきた子供達がどうなったかから目を逸らし、コカインを吸って、自分の信じる正義に没頭するのが人間らしくて好き。
コカインは結局やめられなさそう。
・チャターラ
こんな倫理観ぶっ壊れクソ強成人男性が川崎にたまたまいたの面白い。
川崎ってやばい。
・グロシーンについて
一応グロシーンはあったっちゃあったけど、悪意はなく淡々と事実を描写しているように感じたため、そこまでグロいとは思わなかった。
(グロシーンのものさしの中心が白井智之になってしまっている。よくないかもしれない)
直木賞受賞作品を読むのは多分この本が初めてな気がする。
宮部みゆきさんの「この作品は、直木賞の長い歴史のなかに燦然と輝く黒い太陽なのです」ってコメントが好き。
他の受賞作も読んでみたくなった。
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