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詩「癒やしの作法」
癒やしの作法
どんなに科学が発達しても
こころを癒やすことはできない
傷ついた身体は
薬や手術で治すことができても
傷ついたこころは
薬でも手術でも治せない
こころが傷ついたら
鳥や獣のように
じっと癒えるのを待つしかないのだ
もちろん待っているというのは
何もしないということではない
食べなければ飢えてしまうし
眠らなければ体力を消耗する
それもまた鳥や獣が
自分の身体と対話しながら
餌を探したり眠ったりするように
自分のこころと対話しながら
できるだけこころの体力を消耗しないよう
なおかつこころが飢えないように
自然治癒の力を信じて
時に身を委ねるしかない
ああ私は
どれくらい待たなければならないのだろう
幾度こころと対話しなければならないのだろう
もちろん傷が癒えずに
死んでしまう鳥や獣もいる
だが、こころが死んだからといって
身体が死ぬとは限らない
もっとも注意すべきは
死んだこころを抱えながら
身体のみ生き続けることだ
それこそがこころを持っている
人間の不幸だ
だから私は
精一杯こころの声に耳を傾けて
また一日また一日と
いのちをつないでいこう
けっしてこころだけが
先に死ぬことのないよう