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俳句「冬の掲載俳句」

 この1年間に掲載した冬の俳句42句です。俳句の右の★印をクリックすると、エッセイを添えた掲載ページが開きます。

始めなき介護の家の五日かな                   

人間にみな臍があり寒卵                     

冬凪や汀澄みたる瀬戸の海                    

一盌の中にありたる小春かな                   

つぶやける唇ゆるく冬に入る                   

竜の玉消えたり小人ありぬべし                  

杖をつけば髭ある十二月                     

逃げなむと打つ手に潰れ冬の蠅よ                 

窓拭いて冬青空に触れてみる                   

柚子ひとつ母の足湯に浮かべたり                 

戦なき世を祈りたし聖夜こそ                   

星ひとつ夢にもらひしクリスマス                 

平然と老母居座る煤払                      

締めむとて何かは緩む師走かな                  

糠床の白菜も聞く除夜の鐘                    

おばちやんのママちやり速し初電車                

うまづらがおたふく風邪をひけばふぐ               

七日粥すずなすずしろ他は分かず                 

息白し所詮独りと嘯きて                     

服薬欄血圧欄ある初暦                      

暖房や老母の部屋は常春に                    

蒟蒻の雪待つごとく静かなり                   

パタカラのパの音低し冬の空                   

焼藷のねつとりとしてすでに餡                  

いつの日かプリンを季語にしてみせる               

大寒に耐へをる母の心の臓                    

「寒い」てふ寂しさもあり背を摩る                

亡き父をおもひて選ぶおでん種                  

リウマチの姉の手赤し雪もよひ                  

マスクしてことばの熱に気づきけり                

冬帽子老母よそれはテディベアだ                 

急ぎとてふくら雀とにらめつこ                  

若者に皸あれば愛でるべし                    

亡き父を真似て柊挿しにけり                   

母と子で名告り合ひたる朝の霜                  

母の黙また冬雲に日は陰り                    

母笑みて胸に日の差す小春かな                  

荒星しづまれ暴言も虐待                     

二時間の老母の昼餉日短                     

外で白き息はき介護へと戻る                   

冬晴や老母健啖脈もよし                     

リウマチの姉が母看る冬の夜                   


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