映画感想「八犬伝」
-あらすじ-
一城の主、里見義実は、景連率いる隣国に責められていた。形勢は不利の状況。
そんな中、義実は愛犬の八房に、「景連の首を取ってこれたら娘の伏姫を嫁にやる」と戯言として述べた。
すると、八房は瞬く間に敵陣へ向かい、景連の首を取り帰陣する。
そこからは形勢逆転、隣国の兵を退け、戦に勝利した。
戦の終わり際、景連を唆したとして、玉梓という女の首を切るのだが、彼女は呪詛を吐き、以降里見氏に仇なす怨霊となる。
平和が訪れた頃、八房が伏姫を嫁とし、一緒に山の中へ消えていってしまう。
娘が犬の嫁になるのが許せなかった義実は、居場所を突き止め八房を撃ち倒してしまう。
その時、八房を庇うように伏姫も傷を負う。
伏姫は、怨霊からの呪いを祓っていたのだが祓いきれなかった。彼女は死に際に、怨霊を倒せるものの目印として8つの玉を各地に飛ばした…
…という「南総里見八犬伝」の始まりを、作者である滝沢馬琴が、友人の絵師、葛飾北斎に聞かせていたところから物語が始まる。
-感想-
1.全体として
見やすい。
構成としては、物語である八犬伝と、馬琴の人生が交互に流れていて、1つの物語にしてしまうと支離滅裂だが、音や絵面の雰囲気などで区別されており、物語と人生、虚と実が入り混じっていても見やすくなっていた。
また、私は「南総里見八犬伝」を全く知らなかったが、間々に虚として入ってくるので、全く知らないままでも楽しめた。
2.虚としての勧善懲悪
この時代からか、いつの世もそうであるのか、悪を挫き正義が勝つという物語はあったんだなと思った。
8人が少しずつ集まり絆を深め戦うというのは、今の少年漫画やスーパー戦隊シリーズ等に通ずるものがあると感じた。
3.実の厳しさと胆力
作家としては成功しているし、本人曰く悪い事は、何もしていないのに、不幸を被る。
息子は病に倒れ、妻との関係は悪いまま先に逝かれ、自分は失明をする。
なんてことが起きるが、筆は止めないし、作風も変わらない。一貫して良いことをしていれば必ず報われるということを書き続けている。
素直にすごいと思う。意地なのか善への盲信なのかはわからないが、28年続けられるのは、やはり怪談の類か。
ただ、妻に関しては、もう少しなんとかしてやれなんだと思ってしまった。物語中で、悪役、妻から取ってきてるのかと思うようなシーンが見受けられた。特に、悪役が後妻として夫を操ろうとするところ。
妻は、仲間はずれにされてると思っていたようなのが更に悲しい。やはりコミュニケーションは大切。
4.良い事をしていれば…
作中で1番報われたのは、息子の嫁に出会ったことだろう。
読み書きできない嫁が、8ヶ月で馬琴の代わりに最後まで書いたというのは、それこそ虚の話だろうと思った。
5.結局のところ
ここまで、馬琴の話は実、八犬伝は虚として見ていたが、実際のところこの、馬琴の人生のどこまでが実なのかと気になった。
また、最後のシーンは、報われたのか虚に飲み込まれたのか判断しかねている。
妻や息子ではなく、自身の物語の登場人物に迎えられるのは、幸福かもしれないが、実より虚のほうが馬琴にとっては大切なものだったのかと少し悲しくなった。
-まとめ-
面白かった。
虚のターンではアクションシーンも沢山あり勧善懲悪ハッピーエンドで良い。
実の厳しい部分や、平坦な感じがより虚を引き立てていた。「早く八犬伝のターンになれ!」と思ってみてました。
八犬伝は言わずもがな、馬琴の人生だけでも1本作れそうだと思ったが、ちょっと辛い面が多そうなので、やはり混ぜるくらいがちょうどいいのかなと感じた。