名物料理を食べない旅
「旅をしたらその地の名物料理を食べるべし」
…って当たり前のことだし、みんなそうしてるだろうと思われるかもしれない。
でも、ヴィーガンになってから、それがなかなか難しいのだ。
11月末にヨーロッパ旅行に行った。ヨーロッパはさすがにヴィーガンへの理解が広まっていて、食べるものがない、ということはなかった。
でも、名物料理となると難しい。オランダにいてもチーズはNG、ドイツのソーセージはNG、イギリスのフィッシュアンドチップスや、クロテッドクリームつきのスコーンもNG。
もちろんそれぞれにヴィーガンの代替品は開発されていて、スーパーで手に入れたり、レストランで食べたりはできる。
でも、それって「おいしいことで有名なこの土地の名物」ではない。選択肢が1つあったらいい方なので、おいしい保証はない。
そういう代替品をわざわざ食べて、「この国の文化を感じる」ことになる気がしなかった。
(ただ、ロンドンではパブとかにヴィーガンの英国式朝食が普通にあって、それを食べられたのは嬉しかったな。ゆで卵の代わりに蒸しじゃがいもがついてきた)
結局私たちの食事はこんな感じだった。
レバノン料理(ファラフェル、フンムスなど)3割
フライドポテト2割
ヴィーガンレストラン(ハンバーガー)2割
ヴィーガンレストラン(ハンバーガー以外)1割
スーパーで買ったスナックなど 2割
ヨーロッパにはレバノン料理店がたくさんある。レバノン料理は元々ヴィーガンのものが多いしおいしいので大好き。とても助かった。
日本のヴィーガンがインド料理店に救われることが多いのと似ている。(インド料理店もたくさんあるけど、インド人彼氏がオーセンティックなのしか認めないので入らなかった。)
フライドポテトは、イギリスでもオランダでもかなり推されていた。フィッシュ&チップスのチップスだもんね。おいしかったけど、大量に出てくるのを真面目に全部食べると胃がもたれるので注意。
ヴィーガンレストランは、どこどこ料理と限定せずにハンバーガーやブッダボウルやらを出している場合が多い。ハンバーガー好きだけど、それしかないのかよと思いもした。
スーパーを見るのが好き。現地の文化を感じられて楽しい。パン、チーズ、ヨーグルト、チョコレート、ポテチなどの中からヴィーガンのものを見つけて、あとフルーツも買って、朝や移動中のおやつにした。
美味しかったのだが、全体的にかなりジャンクに偏ってしまって、ヘルシーな自炊料理が恋しかった。
ヴィーガンになってからがっつり観光旅行をするのは初めてだった。ああ、観光名所を見に行って、名物料理を食べる、そういうタイプの王道の旅はもうできないんだな、と感じた。現地の人と仲良くなって一緒に食事して、珍味を食べて仲間と認められたりとか、そういうことも難しいだろうな、などと、そんな経験ないのに思ったりした。
でも、そういう旅の理想像みたいなものって、どこで持つようになったんだろう。
最近限界バックパッカーのブログを読んでいて思った。
この人たちは、ヒッチハイクしたり、野宿したり、非衛生的な屋台メシを食べたり、怪しげな現地人にあえて着いて行ったり、といったリスクを取ることで、安くてディープな旅を経験できている。
でもこのスタイルは、若くない人、健康じゃない人、女性に見える人にはより大きなリスクになる。自分の許容できる範囲でリスクを取ることになるから、多くの場合、若くて健康な男のような無茶なな冒険はできなくなる。
でもまあそれはしょうがないというか、わざわざそれを嘆く気にもならない。そこが安全で便利な場所になってしまったら、冒険じゃないんだし。
そんな冒険を羨むよりも、自分の許容できる範囲の中で旅の面白さを見つけに行くべきだろう。
ヴィーガンとして旅するのも同じようなことで、なんでも食べる人と同じように楽しむことはできない。でも、その縛りの中で面白さを見つけに行くことはできる。というか、旅行者はみんなそれぞれのハンデを持って旅に出かけているはずだし、その中で楽しんでいるはず。
そういえば、インド人彼氏の両親は、海外旅行してもインド料理しか食べないらしい。「そんな、損してるよ!」と一瞬思ったけど、観光名所を巡ると疲れるから、その合間の食事は慣れ親しんだものがいいのだという。
確かにね。それもありだね。
「ヴィーガンになったら旅で食事を楽しみにできない」ということではない。東京に旅行したら外食しまくると思うし、デリーでは家庭料理を思う存分楽しんだ。次ヨーロッパに旅行したらキッチン付きのエアビーに泊まって、ローカルマーケットで買った野菜で自炊してみたい。要するに、やり方が非ヴィーガンとは違ってくるというだけ。そしてそれはとても楽しいことだと思う。
むしろ普通にどこでも外食できちゃう人より、こっちの方が「ディープ」なんじゃ?と思ったり。