#036 母暮ALS 涙活

介護はされている方もストレスが溜まる。自分で自分のことができなくて、常に誰かに何かを頼まなければ日常のささいなこともできない状態というのは、自己肯定感の低下、人としての尊厳にも繋がる。いつも何かを依頼する側でしかない人の心中は想像に難しくない。ましてや今まで家族のために働くこと動くことを厭わなかった人が、これからはずっと家族の手を借りて生活していくのですよとなったら、どんなに絶望的で申し訳ない気持ちに埋め尽くされることだろう。

私は介護者なので介護する側の気持ちや事情もわかるし、将来のこの病気の発症率が50％と言われているので、介護してもらうかもしれない現実もリアルに想像したりしている。介護以前に、徐々に病状が進行していく日々を自分ならどう過ごすのだろうと感じてみたりもする。

兄弟がそんな私達に「涙活」をしたらどうかと言った。涙を流すことで緊張がほぐれてストレスが緩和するらしい。これは不思議とあくびや無理やりの涙では効果がないとのこと。感情が動いて心から流れる涙が重要なのだという。だからドラマを観て泣くと「今日は涙活できたね」と母と言い合う（笑）ただあまりに頻繁に母の部屋からぐすんぐすんと鼻水をすする音が聞こえてくると何かあったのか、私が何かしたのかと心配になるけど。覗くとテレビを観ているのでほっとする。

胃ろうのストレスがあるので、気を紛らわす上でも夢中になれるドラマは必須。毎日胃ろうの後に具合が悪くなる。高カロリーが胃に入るからだろうか？ なので、胃ろうをしていることを忘れさせてくれるくらいハマって集中できるドラマが本当に必需品なのだ。母がドラマを観ている間にささっと胃ろうを終わらせたい。といってもなんだかんだと30分はかかるけど。

母の場合はお気に入りの海外ドラマがこれでもう3周目に入っている。「同じドラマでさすがに飽きたでしょ？」と聞くと、1回目はサラッと見てたけど、2回目で登場人物の関係がよくわかり、3回目はセリフや構成の素晴らしさに関心するという。「後悔はさせないのであなたも観るといい」とすすめてくれるけど時間がとれずまだ未視聴。探してみたらU-NEXTにはあってNetflixにはなかった。つい先週にU-NEXTからNetflixに切り替えてしまった……。