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#028 母暮ALS 介護のはなし

体重下降の危機的な期間がやっと終わってくれた。9月下旬に下痢をしてから思うように食事や胃ろうができず41kg台をうろうろして、40kg台になったりもしていたのでずっとヒヤヒヤしていた。40キロを割ると39kgなどという小学生以来見たこともないような数字を見なければいけないと思うと生存の儚さを感じてしまうので恐怖だった。

体重増加のポイントは胃ろうを一日2回から3回に増やしたこと。これは母には少し拒否感があったけれど(胃ろう後が苦しいから)病院で会話した同じ病気の方が一日3回胃ろうをしていて、しかも1回にラコールを2本入れているというのを聞いてから、本人の抵抗感が払拭されたよう。それからは積極的に胃ろうに向き合ってくれているように感じる。

こうして情報交換ができるのも専門的にALS外来が設置されている病院だから。通院日には何人ものALS患者さんと待合室で一緒になり、話さずともお互い様子を見たり人の会話や、介護者の動きなどを見て過ごすことができる。そんなわけでその方とは今はLINEで情報交換をしている仲になった。他にも訪看さんのご紹介でALS患者さんとのつながりができた。みんな親切で善意の輪が見える。

母と一緒に行動していると、母の優しい雰囲気と感じの良さで人から好意的な対応を受けることが多い。東京は人が冷たいなどというのは、こちらも冷たいからなのかもしれない。姉妹が東京に来て出かけているときも同じように思ったこともある。あれ?東京の人って他人にこんなに気さくで優しかったっけ?と。たしかに姉妹も柔らかいオーラを漂わせている。やはり人に優しく親切にされるには自分が先に柔らかいオーラを放たなければ相手の丸い雰囲気も引き出せないのではないかなどと、家事の合間に頭の中にいろんなことを浮かべている。

日常の雑務に追われて、夫や子どものマネージャーのような役割をしつつ母の介護もしている。犬もいる。いつも周りの人のスケジュールで動かされているような錯覚になる。主婦とはそういうものなのだけども、終わりのない「リクエスト」に休息がないように感じることもある。私の大雑把な介護に母が「短気」と言った「え?短気?!」と聞き返すと「あ、間違えたせっかちと言おうと思ったらせっかちが出てこなくて短気って言っちゃったわハハハハ」と笑った。私もつられて笑ってしまった。「短気」と言われるとすごい悪口のようだけれど「せっかち」というとなんだか批判しているようではあるけれどなんとなく逃げる余白のあるぎりぎりの口撃で愛嬌もある気がする。

兄弟がそんな私に「抑肝散加陳皮半夏」を持ってきて毎日飲めと言う。これはイライラした人や怒りっぽくなった痴呆老人に処方されたりする漢方らしい。ありがたく毎日飲む努力をしている。漢方の匂いや味が嫌いな人もいるけれど、私はこれがリラックスするいい香りで苦みも好きだ。「それを飲んで嫌だと思わないなら合っているんだろう」と言われた。

この漢方を飲んでいることを軽い気持ちでケアマネさんに話したら急に顔色が変わって心配して、介護者家族のヘルプの行政サービスを教えてくれた。訪看さんに任せられることは頼んだらいいのよと言いその目は真剣だった。そんなに問題意識を持たれるとは思わなかったので、言動には気をつけなければと反省した。うちのケアマネさんはとてもいい方で私も母も安心して様々相談している。そして教えていただいたサポートもありがたく申請した。住んでいる地域の行政ごとにサポートやサービスは違う。例えば介護4の父を在宅介護していた母によると、介護者だけの温泉と食事会というのがあったと教えてくれた。さすが長野だ。とはいえ介護が大変で留守にできないから母は一度だけ参加したのみだったらしい。ちなみに東京のうちの区はさすがに温泉や食事とかではなく、ホームヘルパーさんを安く利用できるとかそういう類のサービスらしい。

実際介護者の負担は大きな問題だと思う。団塊の世代がこれからバタバタと倒れていく中で家族で介護できる家庭はそんなにないと思う。ソフト面でもハード面でも。先日昔の同僚で女子会をした。おばさんが女子会と言うなと子どもに毎度つっこまれるけれど、そう言われるとわざとその単語を使いたくなるのでいつも女子会を連発している。で、たまには自分たちにご褒美をということでホテルのアフタヌーンティーに行ってクリスマスの華やかな雰囲気を存分に味わってきた。そこで話してみるとみんな介護経験者で、ふたりともすでに親を在宅介護したあとに現在は施設に入所の状態だった。20代のときは恋愛話に花が咲いていたけれど今やすっかり介護が話題の中心になってみんなそれぞれその課題にどっぷりだった。同じ時代に生きてきて長く付き合っていると友人の人生の歩んできたその時々のステージも見てきているので感慨深い。同僚は長野の実家にも泊まりで遊びに来てくれてうちの母とも気があっていい感じに過ごしていた。だから母の今をとても心配してくれてお見舞いに来たいと何度も言ってくれた。しかし、母も最近は疲れやすくて身支度するだけで息がきれてしまう、もう誰とも会いたくないと日頃から言っているから「気持ちだけ伝えるねありがとう」と断った。

施設の話を興味深く根掘り葉掘り聞いていると「どんな施設が希望なの?」と聞かれた。私は最後まで母を自宅でみるつもりなので施設に入れる予定はないけれど知識として知っておきたいと話すと「えらいね」と言われた。ふたりとも在宅介護でトイレのお世話もして夜中も親御さんのそばで寝て何度も起きてケアをして、それから朝会社に行くというハードな生活をしてきたからこそ介護のリアルがわかっている。そして、施設入所時の部屋の動画を見せてくれた。綺麗で快適そうだった。ふたりともだいたい月20万円台、紹介や病院からの特別割引もあったそう。学校のママ友からは月80万の施設に入れたけどサービスはよくないという経験談も聞いていて、施設もいろいろで当たりハズレがあるから難しそう。私自身については施設に入りたいタイプだけれど、母については施設に預けるという選択肢は全くない。


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