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ダイバーシティ

人事労務を任されていたとき、一番大切にしていこうと決めたのがダイバーシティでした。ここでいうダイバーシティは、多様性の意より、インクルージョンに近いものです。国籍・性別・年齢・学歴などで区分されることに、私は抵抗を感じてしまいます。自分は自分、あなたはあなたという想いがあるからです。そもそも一人ひとりが違う人間で、違う視点・発想を持っているのに何かで括ろうとするのはナンセンスです。人が集まればダイバーシティになるのが自然で、そうならない場合にはそれを阻害する要素があるのだと考えています。経験上、ダイバーシティを阻害する二大要素は、セグメンテーションに起因する偏見と、もう一つは管理です。

今回は偏見について人事時代に感じたことを振り返ります。

偏見:採用、学歴、育休

私が採用を始めたとき、技術系の新卒採用の8割が男性でした。自分で採用が決められるようになり、普通に面接して採用したところ、女性比率が5割を超えることが多くなりました。技術系の役員からは「女性ばかり採って」と小言を言われてしまいましたが、私は女性を採ったという意識は全くありません。理念に共感し、活躍が期待できる一人ひとりの”人”にオンボードしていただいたと考えていたからです。

人をみる前に、周辺情報からその人の可能性や特徴を先入観を持ってみることは避けがたいことかもしれませんが、それが偏見とならない努力を常に心がける必要があります。特に普段から同質性の高い人とのみ接している場合は注意が必要です。飲み会などで「どこの大学?」と聞いたり聞かれたりしたことはありませんか? 大卒の人は、当たり前のように他の人も大卒と思い込みがちです。

産休や育休を文字通り休んでいると誤解している方もいます。育休時は人事部所属となる運用だったため、復職時には一人ひとり面談して事情や希望を聴き、復職先や就業環境について可能な限り実現していきました。新しく作った制度も沢山あります。これに対しても「休んでいた人を優遇しすぎだ」という批判がありましたが、個人の事情を踏まえて就業環境を整えることは全社員に対して行っていることで(事実、多くの制度は全社員対象です)、優遇などではありません。この批判の根本は、そもそも「休んでいた」という認識そのものにあると感じます。このイメージを払拭するため、他の異動やMBA留学と同列で、育休を一つのキャリアと位置付け直しました。

残念ながら、私が人事を離れたあとにも、偏見で配属を決めたことがきっかけで優秀な社員が会社を離れるということがありました。先入観に基づかず、社員一人ひとりの意見を聴き、実現するという会社側の意識と行動の大切さを改めて痛感しました。

優秀で自律的な社員ほど自分の頭で考えています。それを聴かず、一兵卒のように扱う時代はもうおしまいです。統計上の事実として各セグメントの傾向を知ることは役に立ちますが、それを安易に当てはめてはいけません。今、私たちにできることは、目の前のサピエンスの話を真っ白な気持ちで聴くことであり、そこにこそ価値があるのではないでしょうか?


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