見出し画像

運命が何かなんて未だ分からないままだけど、

ゆきなへ。

昨日の夜、ママからこの手紙を受け取ったので、
お返事を書いてみたいと思います。

今はいつものビクトリアで、なっちゃんオレンジを相変わらずグビグビ飲んでるよ。

15の君と行く場所も、好きなジュースさえも変わらないなんて、ちょっと笑っちゃうね。

立命館に行くことも、25歳で少し遅れた社会人デビューすることも、どうして分かったんだろう??

その頃から、きっと何か考えがあったりした?
いや、なんにもないだろうなぁ。不思議だね。

10年後の私は、今、好きだったお洋服を仕事にするために、専門学校に入り直してファッションショーの準備に追われているよ。

君の知らない友達と、小さな雑貨屋さんも始めちゃったりして、なんだか予想していたような、してないような、これから先オモロイ人生になりそうな確信だけあるよ。

15のゆきなも、「背が伸びただけ」なんて言い張ってスカートを短くしたり、1番綺麗に見えるベルトの位置や、靴下の丈や色をこだわったり。

髪を染められない代わりに、三つ編み、ツインテール、お団子、とにかく毎日違うヘアアレンジをして。

色のついたリップや、美白の日焼け止めや、透明なマスカラなんかを付けて。
初めて化粧品を買ったのも、15歳の今頃だったっけ。

あのね、小さな努力の結晶を笑われたりしたこともあったけれど、その努力、私は心の底から、やって良かったなって思うよ。

何が好きで、何が嫌いで、何を美しいと思うのか、
抑制された中学生活の中で、その審美眼を知らないうちに養っていたのかなって。

❄︎ ❄︎ ❄︎

中学生の君は、とにかく部活漬けで、全国目指して毎日たくさん泣いていた。

朝練に行く途中、このまま轢かれれば怒られなくて済むのにって、何度も思ったよね。

だけどね、あと数年後、世界が変わるよ。

この世界には沢山の正解があって、金賞を取ることだけが正しさじゃないって分かる。

音楽を心から楽しいと思える日が来るよ。
抱えているトランペットは一生の楽器になるし、
今隣にいる同期とは、どれだけ離れていても、心が繋がっていて、この先一生の友達になる。

16歳になったら初めて海外にも行くよ。

初海外がスウェーデンなんて、言っても信じてもらえないんだろうなぁ。
そこから、アフリカ、アジア、ヨーロッパ。

広い世界に飛び出して、人類学を学んで、世界の
彩りの美しさと、多様な価値観とその豊かさを、
この目でたっくさん経験する。

君が築き上げてくれた審美眼の基礎が、もっと
鋭く、深く、鮮やかになっていくから、楽しみにしていてね。

あとさ、最後に書いてあった「自分のことが本当に好きな、自分の中身を大好きな人と運命で結ばれてね」って言葉、今の所は心配無さそうかも。

私の隣には、「ゆきの芯の強さに惚れた」って言ってくれる優しい優しい恋人がいるの。

私の作った帽子を部屋でも被ってくれて、ミニオンのCMで泣いちゃうような温かくて可愛い人。

私のやりたいことを、沢山応援してくれて、寂しさを隠して背中を押してくれる強い人だよ。

君の近くに座っている初恋の人と、その先何人もの男に、私は何度も泣かされるんだけど、今は本当に幸せだから、安心してね。

この人と結婚するのかは、きっと35歳の私が知ってるんじゃないかな。
10年後の返事、楽しみに待っていようね。

あの時、何度絶望しても命を捨てないでくれて、
踏ん張って、耐えてくれて、ありがとう。

ちゃんと幸せだから、安心してね。
私も大好きだよ。

いいなと思ったら応援しよう!