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キャリコンことば辞典その9:「自己概念」と「自己認識」…普遍的な問いと客観的視点

何だか難しそうな「自己概念」と「自己認識」。
哲学か、心理学か…なんだか学問っぽくてとっつきにくいことばです。

国家資格キャリアコンサルタントの勉強には「自己概念」「自己認識」ということばはよく出てきます。
恐らく、ことばは知っていても「イマイチよくわからない」なんて言う人もいるでしょうし、他人に説明するのはちょっと難しいものです。

この記事では、キャリアコンサルタントの視点から「自己概念」と「自己認識」の違いと効用について考察します。


「自己概念」と「自己認識」の違いとは

「自己概念」と「自己認識」は、どちらも「自分自身」を理解することに関わることです。
自分の人生などについて考える時、どちらも欠かせないことばですが、少しニュアンスが異なります。

自己概念と自己認識の違い

・「自己概念」は哲学的で普遍的な部分と変わりゆくもので構成される

「自己概念」は、自分についての全体的なイメージのこと。
「私はどんな人間か」という問いに対する答えですが、過去の経験や価値観、周囲からの評価などが積み重なって複合的に形成されています。
生まれ持ったり、先天的に持っている固定的な側面と、成長や環境などで変化する側面を持っています。

例えば、「私は優しい人間だ」「私は運動が苦手だ」といったように、自分自身を特徴づける言葉やフレーズで構成されます。
「自己概念」は、自分自身のアイデンティティを形成し、行動の動機づけにも深く関わっています。

・「自己認識」は自分を客観的に把握し、「自己概念」をより深く理解するためのもの

「自己認識」は、自分の特徴や能力を客観的に把握すること。
「自己概念」をより深く理解するためのプロセスでもあります。

例えば、自己評価や他者からのフィードバック、自己観察などを通して高まるものです。「自己認識」は、「自己概念」を構成する要素の一つでもあり、「自己概念」をより明確にするための活動とも言えます。

例えば、性格診断テストを受けて自分の特徴を分析したり、周囲の人からフィードバックをもらったりすることで、「私はこういう人間なのだ」という「自己認識」は深まっていくことなどが該当します。

なぜ「自己概念」と「自己認識」を理解することが大切なのか?

それは、就活などで「自己理解」を深めるために必要だったり、自分の人間関係を円滑にしたり、キャリア開発に役立てるため、自己肯定感を高めるために必要だからです。

自分のことを客観的に理解できていなければ、やりたいことやしたいこと、それらの理由も説明できません。
もちろん、時には本能的・衝動的に行動することだって必要かもしれませんが、毎度そうはいかないでしょう。

「自己概念」と「自己認識」を理解することで、より自分らしく生きることができるだけでなく、他人とのコミュニケーションを円滑にし、自分自身の可能性を広げることにつながります。

キャリアコンサルティングにおける「自己概念」と「自己認識」とは?

キャリアコンサルティングにおいて、「自己概念」と「自己認識」はクライエント(相談者)の次のような悩みや迷いなどを解決するために重要です。

例えば、キャリア目標の設定。自分の価値観や興味関心に基づいた、より実現性の高いキャリア目標を設定するために欠かせません。
強み・弱みの把握や、それらに基づいた適職の選択では、自分の適性や能力に合った仕事を選ぶことができるという点で非常に有益です。
何より、長期的なキャリアを考える際に、継続的な自己成長のための計画を立てる指針となることが期待できます。

似ているようで違う「自己概念」と「自己認識」。自分と向き合う上で欠かせないもの

「自己概念」と「自己認識」は一見似ているように感じますが、その意味合いは異なります。
「自己概念」は、自分自身についての全体的なイメージ、「自己認識」は、自己概念をより深く理解するためのプロセス。
両方を理解することは、自分自身をより深く知り、より豊かな人生を送るために不可欠です。

普段は「自己概念」「自己認識」を考える機会も、意識することもあまりありません。
あるとしたら、進路選択や就活・転職・結婚や何らかの選択などキャリアや人生について考える時ではないでしょうか。
または、自分の考えや価値観が揺らぐような出来事に遭遇した時でしょうか。
こうした時、人は「自分は何者なのか」「自分はどんな人間で、どんな価値観を持っているのか」という自分そのものを見つめ直し、選択や決断を下します。

キャリアコンサルタントは、主に仕事や働き方・その人らしいキャリア選択のためにクライエントを支援しますが、同時にキャリアコンサルタント自身もクライエントの思いや考えを追体験し、深く共感していくことを求められます。
単に話を聞き、支援するのではなく、クライエントらしい前向きな選択ができるような支援をすることは、簡単なようでいて難しいもの。

資格試験に受かるのは単にスタートラインに立っただけ。
キャリアコンサルタント自身も成長し続けられる素敵な仕事ですし、クライエントの話に耳を傾け、共感するという意味をずっと問い続けて初心を忘れずにいたいものですね。


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