見出し画像

#10.地域電子通貨で地域活性化!?~OMOTANコイン導入~

秦野市では、2024年12月1日からデジタル地域通貨であるOMOTANコインが導入されました。
実際の使い方等の詳細は公式サイトや市のHPをご覧いただければと思いますが、今回は「なんで導入されたの?」、「他のQR決済等と何が違うの?」、「市が言っていることってどういうこと?」といった観点から記事を書いていきたいと思います。


概要や実際の使い勝手等については、以下のページが参考になるかと思いますので、興味がある方はリンクをご参照ください。
OMOTANコイン公式HP
秦野市公式HP(秦野市電子地域通貨・OMOTANコイン)
OMOTANコイン(公式アカウント) X
OMOTANコイン(非公式アカウント) X

Xの非公式アカウントを載せるのはいかがなものかとも思いましたが、公式アカウントは単なる市の情報発信窓口的な役割をしているのに対し、非公式アカウントは実際に利用された方の投稿をリポストしていたり、市民目線に立った投稿を多くされているため、今回参考ページとして紹介させていただきました。(なお、非公式アカウントは一般市民の方が運営されているようです。)

1.地域電子通貨の概要

まずは地域電子通貨についてあまりご存じない方のために概要や導入側のメリットを記載いたします(AI使用)。

地域電子通貨とは、特定の地域内で使用できるデジタル化された通貨で、デジタル地域通貨とも呼ばれます。自治体や地域の商店街などが発行し、スマートフォンや専用アプリを使ってキャッシュレス決済として利用できます。地域電子通貨のメリットには、次のようなものがあります。

  • 紙幣や小切手型と比べて導入・運用コストが削減できる

  • 地域内の経済循環を促進できる

  • 地域の魅力を発信することで地域経済の活性化を促進できる

  • お財布としてスマートフォンを使うため、買い物のデータ収集・分析が容易で、地域独自のマーケティングリサーチに活用できる

地域電子通貨の法的な位置づけは、電子商品券や電子マネーなど法定通貨を前もって換金するものと、買い物やサービスを利用した際にポイントとして付与するものに大別されます。

2.目的

概要にてメリット等を記載したところですが、地域独自のマーケティングリサーチに活用できるといった点は、大きなメリットになりそう。ですが、地域内の経済循環を促進できるってどういうことなのでしょうか。
今回、秦野市ではどんな考えをもとに導入されたのか、公式HP等を参考にみていきたいと思います。

OMOTANコインは、神奈川県秦野市のデジタル地域通貨です。地元の消費活動や経済循環を促進し、地域住民と事業者間のつながりを強化することを目的としています。

はだのOMOTANコイン 公式HP
広報はだの(令和6年12月1日)

「地元の消費活動や経済循環の促進」、「地域住民と事業者間のつながり強化」といったことや「使えば使うほど地域が元気に」といったあたりがキーワードになっているようです。

3.なぜ地域活性化?

既存のQR決済等となにが違うのでしょうか。単に専用サイトがあるから、地域の情報が見やすいだけなのでは?と感じている方もいるかと思います。
今回は手数料を基に考察してみます。

①手数料等

市議会議員の方が発信されている情報によると、OMOTANコインの手数料は他のQR決済やクレジットカード決済に比べると低く設定されているとのことです。

X 大塚たけし@hadakoeの投稿より

個店・大型店や商店会・商工会議所への加入・非加入によって細かく手数料が設定されているとは…。
消費者側からすると、店舗の方の手数料って意識が薄くなる部分ではありますが、こう見ると売り上げ代金に占める手数料の割合って結構高いのですね。
店舗側の手数料負担が少なく済むということは、それだけ店舗側の儲けにつながったり、提供するサービスの値段が安く済むといったことも考えられそうです。
また食券制の店舗において新札対応のため機械の入れ替えを検討している場合、機械の入れ替えか、キャッシュレス化かといったことの検討材料になり得るのかもしれません。

②現金ならば手数料はゼロ?

では「現金ならば手数料はゼロだから、キャッシュレス決済なんて使わずに現金が一番なのでは?」といった考えも出てくるかと思いますが、個人的な見解としては、現金でも色々な手数料はかかるし、リスクもあるのでは?と考えています。
なぜかというと…

  • ・お釣りの用意等のための手数料が発生している

  • ・売上の一部を銀行に預け入れて管理している場合、銀行に行く手間が発生している

  • ・現金の支払い⇒お釣りの受け渡しにも時間がかかる

  • ・売上金の持ち出しや強盗に合うリスクがある

と考えるからです。
ここら辺については、各店舗のオーナーさんの考え方や主義主張が異なってくるはずですので「色々な考え方があるよね」といったように参考程度にしていただければと思います。

③ランニングコストは?

なんとなく、消費者にとっても事業者の方にとっても良さそうなのでは、と思いますが、実際の運営にあたってのランニングコストはどの程度のものなのでしょうか。
例によって市議会議員の方の投稿を参考にみていきたいと思います。

X 大塚たけし@hadakoeの投稿より

初年度は大きく費用がかかるものとして、令和7年度の支出をみると年間で6,300万円かかるようです。
この内訳は公開されていませんが、表を見ると以下の内容に使われていると読み取れます。
・通常還元ポイントの原資
・システム管理、運営経費
・チャージ及び振込手数料等
・行政ポイントの原資
・行政が主催するイベントの経費

これらの経費すべて、店舗手数料からまかなえるようになれば、儲けが出て色々なことに利用できるのでしょうが、どれくらいの消費があればよいのでようか。
令和7年度の収支予測を基に、店舗等手数料が決済額の2%(概ねの平均)と仮定して推測してみます。

店舗換金手数料等(収入)が約2,700万円とすると、そのうちの半分(決済額の1%)である約1,350万円は通常還元ポイントの原資(支出)にまわされます。
そのため、年間のランニングコスト(通常還元ポイントの原資を除く)は

約6,300万円ー約1,300万円=約5,000万円

となります。
決済額の1%は常に通常還元ポイントの原資に回されることになるので、手数料2%のうち残る1%でランニングコストを賄う必要があります。
そのために必要となる年間の決済額は、

約5,000万円÷0.01=約50億円

となります。
これを25,000人(12/25時点では28,505人)の利用者で達成するとした場合、年間では

約50億円÷25,000人=約20万円(月あたり16,667円)

細かく分解していくと、日常の買い物をOMOTANコインでの支払いに変えるだけで、達成できそうな金額のような気がしてきます。

④それ以上稼いだお金はどこへ?

通常のQR決済やクレジットカード決済を行った場合、手数料はその運営元の収入となり、その会社の従業員の給料だったり、システム経費、全国的なポイント還元キャンペーン等の原資に回されることになるのでしょう。

今回導入された地域電子通貨では、地域での還元キャンペーンに使われたり、場合によってはこれから進められるであろう、まちづくりやインフラ整備等の原資にもなり得るかもしれません。

4.おわりに

「使えば使うほど地域が元気に」といったキーワードが示すように、日常の買い物を地域電子通貨での支払いに変えるだけでも、その手数料が地域のために使われることによって、将来の生活が豊かになるのかもしれません。
個々の家庭によっては、別の決済手段のほうが還元率が高いためそちらを利用する、という方が少なくないかと思います。
一種の「買い支え」に近い考え方かもしれませんが、今回の記事を見た方が地域電子通貨を使ってみよう、と思える一助になりましたら幸いです。


いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集